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酒税における国税庁の役割とは?免許や還付・酒税法違反などを解説
国税庁は、アルコール離れが進む若年層対策として「日本産酒類の発展・振興を考えるビジネスコンテスト~サケビバ!~」を発表し、2022年11月にはコンテストが開催されることが公表されています。
「国税庁がお酒?」と違和感を持つかもしれませんが、実は酒類の消費量や地理的表示などは国税庁によってすべて管理されており、たとえば全国各地の国税局では毎年日本酒の酒類鑑評会などが行われています。
そこで本記事では、酒税と国税庁との関わりに焦点を当て、酒税の免許制度や還付、酒税法の違反事例や新たに改正された税制などについて解説していきます。
1.酒税と国税庁との関わり
冒頭で述べたように、酒税とそれを管轄している国税庁は、酒類の製造や販売などを巡りさまざまな面で密接にかかわっています。
その中でも特に重要なものとしては、以下の5点が挙げられます。
・酒税法の通達
・酒類に関わる免許
・還付や免税の手続き
・酒税法違反
・酒類鑑評会などのイベント
酒税法の通達
通達とは、行政機関内で作成される指示・命令のための文書の事です。具体的には、上級行政庁が下級行政庁や職員に対して、法令の解釈や運用などを具体的に指示する行為のことです。
本来、通達は行政内部の命令に過ぎないため法令のような効力は持ちませんが、通達の存在が国民の権利義務に重大な関わり合いを持つケースなどでは例外的にその効力が認められています。
酒税法においても実務上はこの通達に基づいてさまざまな解釈や処分が行われるため、酒税法を詳しく知っておくためには通達を知っておいた方が良いでしょう。
なお、酒税法に関する通達は、国税庁HPに掲載されています。
<参照元>国税庁『酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達』
酒類に関わる免許
酒税法では、酒類の製造や販売を行うためには以下の免許が必要であると定めています。
・酒類を製造する場合・・・酒類製造免許
・酒類を販売する場合・・・酒類販売免許
酒類製造免許
酒税法第7条第1項において、酒類を製造しようとする者は、製造する酒類の品目ごとに、また製造場が複数ある場合は製造場ごとに、その製造場を管轄する税務署長の免許を受けなければならないと定められています。
免許を受けるためには申請書を税務署に提出する必要があり、審査によってすべての要件が満たされている場合は酒類製造免許が交付されます。
ただし、過剰な競争が行われ市場での需給バランスが崩れるのを防ぐため、要件をすべて満たしていたとしても免許が交付されない場合もあります。
(酒税法第7条、第10条)
(法令解釈通達第2編第7条関係、第10条関係)
<出典>国税庁『酒類製造免許関係』
酒類販売免許
酒税法第9条第1項において、酒類の販売業または販売の代理業若しくは媒介業をしようとする者は、販売場ごとに、その販売場を管轄する税務署長の免許を受けなければならないと定められています。
酒類製造免許と同様に、免許を受けるためには申請書を税務署に提出する必要があり、審査によってすべての要件が満たされている場合は酒類販売免許が交付されます。
ただし、こちらも製造免許と同様で、過剰な競争が行われ市場での需給バランスが崩れるのを防ぐため、要件をすべて満たしていたとしても免許が交付されない場合もあります。
このように、酒類の製造や販売などを行う場合は、国税庁の執行機関である税務署の税務署長に許可を得なければなりません。
(酒税法第9条、第10条)
(法令解釈通達第2編第9条、第10条関係)
<出典>国税庁『販売業免許関係』
還付や免税の手続き
酒税法では、原則として、酒類を製造場から移出もしくは保税地域(海外からの輸入品を港から陸揚げした保管場所のことです)から引き取る際に酒税を課すように定めています。
しかし、製造場からの移出であっても、他の酒類を製造するための原材料として用いられる場合や外国に輸出する場合には、一定の手続きを行うことで例外的に酒税を免税とすることができます。
この手続きも、税務署で行わなければなりません。
(酒税法第28条、第28条の2、第28条の3、第29条)
<出典>国税庁『免税(未納税・輸出)』
また、災害などにより販売もしくは提供するために保持していた酒類が破損していた場合は、酒税相当額の支払いを受けることができます。この還付手続きも、被災場所の所轄税務署で同様に行われます。
(酒税法第29条、同法施行令第36条)
(法令解釈通達第2編第29条関係)
<出典>国税庁『免税(未納税・輸出)』
酒税法違反とその罰則
酒税法では酒税法違反に対する罰則を定めており、酒類の製造免許を受けないで酒類を製造した場合10年以下の懲役または100万円以下の罰金に、酒類の販売業免許を受けないで酒類の販売業をした場合は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に課せられると定めています。
(酒税法第54条、第56条)
<出典>国税庁『【酒類製造・販売業免許関係(共通)】』
「免許を受けずに酒類を造ったり売ったりすることはないから関係ないかな」と思われるかもしれませんが、実は気が付かないうちに酒税法違反を犯してしまっている場合があります。
こういった具体例は枚挙にいとまがありませんが、よくあるのが以下のケースです。
・山ぶどうをもらったので梅酒のように焼酎に漬けてみた
・集めていたウイスキーが要らなくなったのでオークションサイトで売った
・サイト内で酒類の販売を仲介
山ぶどうをもらったので梅酒のように焼酎に漬けてみた
酒税法では、酒類に何かを混ぜるのは新たな酒類を造ることになるため、酒類製造免許を受けなければならないと定めています。
ただし、アルコール分が20%以上の酒類に自ら消費する目的(販売目的の場合はダメです)で混ぜる分には例外的に製造行為にあたらないものとしています。
ですから20度以上の焼酎などに梅を漬けて自家消費用に梅酒を作る分には酒税法違反になりませんが、米、麦、あわ、とうもろこしやぶどう(山ぶどうを含む)などを漬け込むと、自家消費用であったとしても酒税法違反となってしまいます。
(酒税法施行規則第13条第3項)
<出典>法令検索『酒税法施行規則 第13条(みなし製造の規定の適用除外等)』
集めていたウイスキーが要らなくなったのでオークションサイトで売った
ウイスキーコレクターであれば、100本程度のコレクションは持っていても珍しくありません。健康上の理由などでウイスキーを飲むのを止め、これまで集めたコレクションをオークションサイトで販売すると、酒税法違反に問われることがあります。
自分が持っている酒類を継続して販売するのでなければ酒類販売免許は必要ありませんが、オークションサイトで継続して販売するのであれば、酒類販売免許が必要になります。
(酒税法第9条)
<出典>国税庁『第9条 酒類の販売業免許』
なお、どれくらいで「継続して販売する」要件に該当するかの判断は非常に難しいため、ご心配な方は税理士などの専門家に問い合わせておきましょう。
サイト内で酒類の販売を仲介
自分が運営する商品販売サイト内で、酒類を販売する事業者にスペースを間貸しさせてあげて、販売の仲介を行うケースです。
酒類の販売業者には酒類販売免許が必要なのはもちろんですが、単に窓口として取次業務を行うだけであっても、酒類販売免許がなければ酒税法違反となってしまいます。
2021年6月4日の朝日新聞デジタル版によると、福島県大玉村において、村内の酒蔵支援の目的で村が申込窓口となり日本酒の販売や発送の取次業務を行っていたところ、酒税法違反の疑いがあるとして福島税務署が村に対して行政指導していたことが報じられました。
このように、単なる仲介業務であっても免許がなければ酒税法違反となってしまう恐れがあるため、注意しておきましょう。
酒類鑑評会などのイベント
酒類の品質評価を通じて酒造技術の進歩や発展を促し、品質の向上や酒類業の健全な発達を目的として、全国の国税局で毎年酒類鑑評会が開催されています。
またこれ以外にも、冒頭で述べた「サケビバ」などのイベントが、国税局によって不定期的に行われています。
2.酒税法の改正について
2017年の税制改正で、酒税法も2020年10月以降に大きく変わることになりました。この改正で何がどう変わるのかについて、最後に解説します。
今回の改正で大きく変わったのは、以下の2点です。
・ビール系の酒類の税率がすべて同一化へ
・日本酒とワインの税率を同一化へ
ビール系の酒類の税率がすべて同一化へ
発泡酒や新ジャンル(第三のビール)は、ビールに味は似ているけれどビールよりも安く買えるアルコール飲料として人気を博していました。
発泡酒などが低価格で販売できたのはビールと比べると税率が低いことなどがおもな理由でしたが、2020年10月、2023年10月、2026年10月の3段階で税率の調整が行われ、最終的にはビールも発泡酒などもすべて同一の税率となることが決まりました。
この結果、ビールはこれまでより安く、そして発泡酒や新ジャンルはこれまでより高くなることになりました。
日本酒とワインの税率を同一化へ
日本酒とワインは同じ醸造酒ではあるにもかかわらず、ワインに比べると日本酒の税率はこれまで高く設定されていました。この不均衡を是正するため、2020年10月と2023年10月の2段階で税率の調整が行われ、最終的には日本酒もワインも同じ税率となることが決まりました。
3.おわりに
本記事で述べたように、「お酒」という嗜好品は、酒税を管轄している国税庁と、製造や販売・免許や処罰などさまざまな面で大きくかかわっています。
この酒税の仕組みはかなり複雑で、私たち一般人には分かりにくいだけに、「気が付いたら酒税法違反を犯していた!」ということにならないように十分に注意するように心がけましょう。
ここまで記事をお読みいただきありがとうございました。
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国税OB顧問 税理士
富川 泰敬
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