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税理士法人・税理士事務所・公認会計士事務所「同士」でのM&Aが増えている理由、その傾向や検討時に確認すべき項目など詳しく解説

税理士法人・税理士事務所・公認会計士事務所「同士」でのM&Aが増えている理由、その傾向や検討時に確認すべき項目など詳しく解説

税理士法人・会計士事務所には大きく分けて2つの組織があります。

複雑な税務・会計処理を求める大手企業を主な顧客とする税理士法人・公認会計士事務所と簡単な税務・会計処理中心の中小企業を顧客とする税理士事務所です。

しかし中小企業が日本企業の99%を占めるように、会計士業界もいまだ中小規模の税理士事務所が多くを占めています。

その会計士業界で士業同士のM&Aが増えています。

なぜでしょうか?

今回の記事では税理士法人・会計士事務所「同士」間のM&Aが増えている理由、その傾向、M&Aを検討時に確認すべき項目など、詳しく解説します。

1.なぜ今、税理士法人・税理士事務所・公認会計士事務所「同士」でのM&Aや事業承継、事業譲渡が増えているのか?

税理士法人・税理士事務所・公認会計士事務所「同士」がM&A等で事業承継・事業譲渡を考えるようになった背景は大きくいって4つあります。

理由その1・会計事務所長の高齢化及び後継者不足

ひとつの理由は会計事務所長の高齢化及び後継者不足です。

会計事務所の所長といえば税理士・公認会計士です。

彼らの多くがバブル期の1980年頃に開業し、現在60歳から70歳代を迎えています。

その年代になると事務所として当然世代交代を考えねばなりませんが、本人が進化するクラウド会計等の波に乗り切れなくなっている上に、少子化と会計士が資格業であるという二つの要因から後継者を見つけたくとも見つけられない後継者不足に陥っています。

それへの解決策としてM&Aが起こっているのです。

理由その2・開業リスクの回避

開業リスクの回避もM&Aに拍車を掛けている理由の一つです。

これは主に買い手の側の理由ですが、税理士法の改正以降、さらに業界の競争が激化しています。

加えてデジタル業務の進展で対応できる会計事務所の差も生まれ、顧客の奪い合いが発生、以前は自然に増えていた顧客も会計事務所が努力をしないと増えない構造になり、開業しても成功する確率がかなり減ってきました。

M&Aによる会計士事務所の事業承継は、その開業リスクを大きく減らすことができるので今積極的に活用されているのです。

理由その3・時間短縮

時間短縮も士業間のM&A案件を増やしている理由のひとつです。

今から会計士事務所を開業しても、事業として軌道に乗せるまでに時間がかかる、顧客が増えるとは限らない、スタッフを雇っても固定費だけが出ていく等のリスクを抱えてしまいます。

その点、すでに顧客や熟練スタッフを持っている会計士事務所をM&Aで買収すれば、買い手としても事務所を一から立ち上げる必要もなく、経営を軌道に乗せるまでの時間短縮が図れるのです。

理由その4・M&Aに対する経営者の考え方の変化

M&Aに対する経営者の考え方の変化もM&Aが増えている理由の一つです。

2000年以前には、M&Aを通じた事業承継・事業譲渡に否定的な考え方の税理士・公認会計士が多かったのですが、以降、上記のような時代背景の変化、個人的理由等でその考え方は大きく変わってきました。

今では逆に会計士事務所が生き残っていくためにはM&Aを積極的に活用すべきという税理士・公認会計士の数が増えており、その認識の変化がM&A案件の数を増やしているのです。

2.税理士法人・税理士事務所・公認会計士事務所における「M&A」「事業承継」「事業譲渡」それぞれの意味の違い

同じ会計士事務所同士の事業承継といっても、売り手買い手、それぞれの立場によっても「M&A」「事業承継」「事業譲渡」の意味合いが違ってきます。

この章ではその違いを明確にします。

■M&A

M&Aとは「企業の買収及び合併」をあらわす業界用語です。

ドライで冷たいイメージを描かせるM&Aですが、売り手にとって、これは自分がこれまで働いていた職場がなくなることを意味します。

M&Aを契機に税理士、社員、顧客、それぞれが身の振り方を考える機会となるのです。

一方買い手にとってM&Aは新しい組織や顧客が自社に加わることを意味します。

働く仲間、顧客が増えるので、それをお互いどう融合させていくか、失敗は許されない、大きな課題が生まれます。

■事業承継

事業承継とは何らかの関係を使って後の世代に事業を引継ぐ方法をいいます。

代表的なものは親から子、または従業員への事業承継です。

会計士事務所の事業承継の場合、条件さえ整えば、判断は所長税理士単独の判断で行えるので、M&Aに比べれば手続きは比較的簡単です。

ただし現在はその条件が整わないことが多く、会計士事務所も別の方法で事業承継を模索せざるを得なくなっているのです。

■事業譲渡

事業譲渡には2つのタイプがあります。

「全部譲渡」と「一部譲渡」です。

これを会計士事務所に当てはめると、業務にも税務代理、税務書類作成、税務相談、コンサル、M&Aなど多岐にわたり、会計士事務所同士で事業譲渡する際も業務を「全部譲渡」するのか、それとも「一部譲渡」するのかでその取引内容が大きく異なってきます。

売り手としては「全部譲渡」を望むことが多いですが、買い手としては、不要な業務を買い取ってもお荷物にしかならないため、全業務を引き受けるか、将来事務所の発展に結びつく業務のみ買い取るか、選択を迫られます。

3.税理士法人・税理士事務所・公認会計士事務所「同士」のM&A、事業承継、事業譲渡の傾向

税理士法人・会計士事務所同士が事業承継する場合、売り手買い手が税理士法人か、税理士・公認会計士事務所、いわゆる会計事務所か、立場によっても色々なケースがあります。

また士業事務所同士の事業承継・事業譲渡では、一般企業のように株式の売買で対価決済するのでなく、金銭授受で決済するのが一般的です。

そのような特殊事情も踏まえて、この章では売り手買い手、双方の立場を変えて、4つのケースでM&A、事業承継、事業譲渡の傾向を解説します。

税理士法人から税理士法人に事業承継する場合

税理士法人から税理士法人に事業承継する場合、一般的にはM&Aの一形態である合併の形で行なわれるのが合理的です。

また合併には吸収合併と新設合併があり、両税理士法人の話し合いを通じてスキームが決まります。

合併のやり方でそれぞれ長短所があるので、一概にどちらがいいとはいい切れませんが、吸収合併の方が合併後に経営トップがひとりだけということになり、組織としての安定度はこちらが高いです。

一方吸収された側のトップだった税理士は、引退の他に、そのまま新法人で社員税理士として残る道もあります。

会計士事務所自身が内部昇格・外部招請で後継者を見つけて事業承継する場合

このケースでは、他の方式に比べて会計士事務所のトップが独自判断で意思決定できるので自由度は高いです。

ただし問題は内部昇格・外部招請で簡単に意中とする後継者が見つかるかという点です。

もちろん後継者が身内周辺から見つかるなら組織の中で時間をかけて後継者教育できるので本来ならそれが望ましいですが、今では子供さえ家業を継ぎたがらないご時世、簡単には後継者は見つかりません。

また税理士・公認会計士という資格業のため、後継者はまずは難しい試験を通らねばならないというハードルもあります。

さらに外部招請で後継者を見つけてくるという方法もありますが、これもどれだけ事務所が後継者を受入れられる環境や条件を整えられるかという問題があります。

会計士事務所が税理士法人に事業承継する場合

小規模な会計士事務所が大所帯の税理士法人に事業承継するケースは、日本の現状を見れば、今後ますます増えてくるケースといえるでしょう。

会計士事務所が税理士法人に事業譲渡されると、税理士法人は会計士事務所が管理していた社員・顧客をそのまま引き受けるので、旧事務所の社員も多くは安心してそのまま税理士法人で働いたり、顧問先も取引を継続してくれたりします。

また旧事務所の所長税理士も、売却後の身の振り方として、すぐに引退、法人で一定期間勤務後引退、社員税理士として生涯勤務、などのさまざまな方法が取れるので、事務所売却に係る精神的ストレスも少なくできると考えています。

会計士事務所が会計士事務所に事業承継する場合

このケースでは個人間同士の売買となるので、特に買い手側の税理士が売買に対応した十分な資力があるかどうかを問われます。

さらにこのケースでは個人間、しかも知り合いの税理士間で行なわれるケースが思い浮かび、どうしても条件詰めが甘いあいまいな取引になりがちで、逆に売却後に「言った」「言わない」等のやっかいなトラブルになったりします。

そういう面では、やはりいくら知り合いでも、利害関係のない第三者を仲介者に入れることで、取引の正常化やトラブル回避ができるのではないかと考えます。

4.税理士法人・税理士事務所・公認会計士事務所が、M&Aや事業承継、事業譲渡を検討する時に確認すべき項目

税理士法人・会計士事務所同士が事業承継・事業譲渡を検討するとき、確認すべき項目は多々あります。

この章では売り手、買い手、双方の立場から重要な確認項目を解説します。

■売り手の確認項目

売り手側が確認すべき項目は主に以下の3つです。

・後継者問題を解決できるか

売り手として抱えている後継者問題を事業譲渡で解決できるかどうかが確認すべき項目の1点目です。

会計士事務所は地域に根ざした事業活動をしており顧客層も多種多様です。

それだけに簡単に事業を辞められないし地域への影響も大きいので、M&A等で事務所の後継者が見つかれば引き続き地域への貢献が可能になります。

・大手法人の傘下に入って経営が安定するか

大手法人の傘下に入って経営が安定するかどうかが確認項目の2点目です。

事務所の譲渡を検討するということは、ひとつは対策を取らないと、近い将来、事務所経営がじり貧になってしまうという理由があります。

それが大手法人の傘下に入って経営が再び安定するならよいですし、さらに発展できるならなおさら望ましいでしょう。

・事業譲渡後も職員の雇用、顧問先の継続ができるか

譲渡後も職員の雇用、顧問先の継続が守れるかという点も売り手側の大切な確認項目です。

じり貧の経営を何も対策を取らず放置のままだといずれ倒産や廃業が待っています。

しかしそれが事務所譲渡で苦労をともにしてくれた職員の継続雇用や顧問先の取引継続につながるなら結構なことでしょう。

■買い手の確認項目

売り手以上に多くの確認項目があるのが買い手側です。

一度事務所を譲り受けると簡単に返すというわけにはいきません。

そのためにも面倒でもたくさんある確認項目をひとつひとつ潰してチェックしていく必要があります。

ただし全部の確認項目を細かく説明できないので、代表的な確認項目を3つほど取り上げ解説するとともに、後は確認しておくべき項目として箇条書きします。

・資格者、技能者の確保ができるか

会計士事務所というのは一種特殊な職業です。

税理士・公認会計士という資格者がトップにいないことには会計士事務所は成り立ちません。

しかし世の流れとしては法人化による大規模化が進んでいるので、一つの法人に複数の資格者が在籍しているのは当たり前になっています。

さらに現在は業務の範囲が大幅に広がっているので、コンサルやM&A等、得意分野に特化した技能者の確保も経営の課題でしょう。

事業承継を契機にあらたに有能な資格者・技能者が取れるか、大きな確認項目です。

・開業リスクは低減できるか

士業間の競争がますます激化する中で開業リスクはさらに高まっています。

その点、M&Aで会計士事務所を丸ごと手に入れられたら、あらたに法人が支店を作って開業するよりリスクをずいぶん減らせます。

買い手としての大事な確認項目です。

・新業務への展開や事業エリアの拡大は可能か

買い手にとって事業承継の結果、新業務への展開ができるか、あるいは事業エリアの拡大が見込めるかどうかは、事前に確認すべき重要な項目です。

会計士業界で法人化への動きが進むにつれて対応すべき業務範囲が大幅に広がっています。

当然税理士・公認会計士だけでは処理できない業務も加わってきています。

それだけに事業譲渡で新業務に対応できる人材を確保できるか、それを武器に他地域へ事業エリアの拡大ができるかは重要な判断要素になるでしょう。

■その他買い手側の確認項目

上記3点以外にも買い手が確認すべき項目がいくつかあります。

それを以下に列挙します。

・相手が看過できない問題点を抱えていないか(負債、訴訟トラブル)

・売り手側代表税理士の将来の身の振り方

・売り手側所長と顧問先との関係性(深いか浅いか)

・売り手側職員の仕事に対する習熟度

・所長以外に業務の核となるキーマンはいるか、買収後のキーマンの意向は?

5.まとめ・相手先となる税理士法人・税理士事務所・公認会計士事務所の探し方

最後はM&Aや事業承継・事業譲渡で取引の相手先となる税理士法人・税理士事務所・公認会計士事務所の探し方についてです。

これまで士業事務所の売却はその取引額が比較的低く、大手のM&A仲介会社は積極的には取扱いをしてきませんでした。

しかし税理士・公認会計士の高齢化、後継者不足は深刻さを増すばかりでいよいよ尻に火が付いた状態です。

売り手希望もますます増えてM&A市場の拡大が見込めることから、今後は各分野からM&Aアドバイザーもどんどん進出してくるでしょう。

しかし売買の当事者としては、M&Aアドバイザーそれぞれの特徴や得手不得手を知ったうえでうまく使いこなす必要があります。

現在士業間のM&Aで考えられるM&Aアドバイザー候補は以下の3通りです。

・銀行、証券会社、M&A仲介会社、M&Aアドバイザリー(FA)

・税理士法人・公認会計士事務所をM&Aアドバイザー

・個別で募集している税理士法人、税理士事務所・公認会計士事務所

それぞれ利用上の長短所はありますが、税理士・公認会計士の仕事としての特殊性を考えれば、やはり業界事情に精通している同業者をM&Aアドバイザーに選ぶのが適切ではないかと考えます。

さらに個別で募集している税理士法人、税理士事務所・公認会計士事務所をM&Aアドバイザーに選ぶと、顧客のニーズにも細かく応じやすく弾力的な対応が可能です。

さらに自法人でM&A仲介業務を図りつつ、一方で事業拡大を図っているのであれば、たとえ他法人・会計士事務所とのM&A取引が不発に終わっても、その仲介法人がM&Aの受け皿となってセーフティネットになることもできます。

M&Aアドバイザーは多面的に比較して、できるだけ使いやすい先に相談をしましょう。

当税理士法人では「税理士法人・税理士事務所・公認会計士事務所『同士』でのM&A」を積極的に行っております。

税理士法人・税理士事務所・会計事務所の売却・M&Aを検討されている先生方がいらっしゃいましたら、当税理士法人までお気軽にお問い合わせ下さい。

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