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税理士にも得意・不得意がある!自社に合った分野の税理士を探すには
1.税理士にも専門分野や得意・不得意分野がある
⑴ 医師に診療科があることに似ている
医師には様々な専門分野があります。
街のお医者さんの看板を見るだけでも診療科はたくさんの種類があることがわかりますし、ある診療科専門の大規模病院もあるくらいです。
税務についても、税金に所得税・法人税・相続税・消費税など様々な税金があるのと同様に、税金を専門的に扱う税理士についても、過去の経歴や税理士試験の選択科目などによって、「この税金は得意だがこの税金はちょっと・・・」という得意分野・不得意分野があり、どの分野も同じように経験しているといったことの方が少ないくらいです。
⑵ 領域が広い
税金の種類が多いのみならず、同じ税金であっても更に細分化された専門分野が発展するための土壌があります。
例えば、同じ法人税といっても以下のような特徴があり、それによって「公益法人専門」「海外取引専門」「建築業専門」などといった専門を掲げる事務所があります。
・一般事業会社と公益法人では計算体系や課税対象が異なる
・海外取引が多い企業であれば、取引を把握するための語学の知見に加えて、海外取引特有の税法規定を把握する必要がある
・業種によっては業界の取引慣行(経理慣行)や各種規制を熟知している必要がある
⑶ 経験に依存する
その税理士のこれまでの経歴によって得意分野と不得意分野の濃淡があらわれることがあります。
❶ 資格取得の道程
a 税理士試験合格者
税理士試験は税法科目が選択制となっており、所得税法・法人税法は少なくとも1科目の選択が必須であることと、それらに加えて、相続税法・消費税法・国税徴収法・固定資産税・事業税・住民税・酒税法を含めて合計3科目の税法科目に合格しなければなりません。
しかし、裏を返せば、これら各税法科目に全て合格した者はいないのであり、選択した科目は得意、そうでない科目は相対的に不得意という傾向が生じます。
b 税務署出身者
税務署には「所得(個人)・法人・資産・徴収」といった各系統別に組織が編成され、一度その系統に配属されると、基本的には定年まで同じ系統内においてポストアップすることになります。
そうすると、税務署を退官して税理士登録したとしても、例えば、長年一貫して個人課税部門の経験を蓄積してきた者が法人の税務顧問を受嘱したとしても、法人課税部門で経験を蓄積した者よりも知識・経験で劣ることは致し方ないでしょうし、その顧問先にとっても「この先生はいささかぎこちないし自信がないような対応をされる」といった不安を抱くことにもなるかもしれません。
c 大学院出身者
大学院に進学して修士課程を収めることによって、税理士試験の一部科目が免除される取扱いがあります。
そのため、親が税理士であり家業である税理士事務所を承継する予定がある者などは、大学院の進学と税理士試験の受験を並行して税理士資格を取得しているケースがあります。
これについても、体系的に税法を学習する機会があることは良いとしても、大学院ではある一分野を深く研究することから、自ずと得意分野と不得意分野が生じやすくなるようです。
d 公認会計士出身者
公認会計士試験には「租税法」の試験科目がありますが、試験範囲としては幅広いものの、出題の中心は、独占業務である企業監査に直接関連する法人税が中心となり、「法人税の知見はあるが、それ以外については独立してから必要に応じて勉強しよう」というケースがみられます。
e 弁護士出身者
弁護士は無条件に税理士登録でき、税務争訟などの分野で活躍している弁護士もいますが、税額計算ができるかといえばそういった弁護士は稀有な存在ではないかと思われます。
❷ 実務経験の道程
税理士試験合格者(大学院出身者)が資格取得と同時に独立するケースは多くなく、通常は資格取得まで又は資格取得後に他の税理士事務所(税理士法人)や企業の経理部署などで経験を蓄積してから独立するケースが多いようです。
そして、その経験した事務所がある分野の専門事務所であった場合には、自ずとその税理士もその分野は得意で、そうでない分野は不得意といった傾向がみられるようになります。
2.代表的な専門分野
税理士に税務顧問を依頼するきっかけとしては、以下のようにその企業のニーズが新たに発生したことが挙げられます。
成長過程にある企業においては、
・取引量が増加して自前で適切な経理処理を行うことが難しくなった
新規分野(例えば輸出入取引)に参入する企業においては、
・海外取引独特の税法規定に対応する(アドバイスを受ける)必要がある
効率的な企業グループの運営をする必要が生じた場合においては、
・企業再編税制や連結納税制度といった税制に対応する(アドバイスを受ける)必要がある
以下では代表的な税理士の専門分野・得意分野を掲記します。
⑴ 法人税・所得税申告業務
一般的に認知されている税理士業務の典型です。
事業年度は通常は年1回であり、年1回の頻度では適正な申告を自前で行うことが難しいですし、適正申告にかけるエネルギーを本業に投下した方が効率的という経営判断はごく自然なものです。
⑵ 記帳代行・決算書作成業務
これも一般的に認知されている税理士業務です。
税理士事務所からすると採算性に難があり、できる限り顧問先に対応してもらい、税理士自身は申告業務やコンサルティング業務に特化したいという潜在意識がありますが、事業者の属性によっては根強い需要があります。
また、最近はクラウド会計ソフトが進化してきたといっても、入力する者に会計の知識がないと誤った入力を行い、税理士がその修正処理に難儀するといった税理士サイドの不満も聞かれます。
⑶ 相続税申告業務
高齢化による死亡者数の増加、平成27年に施行された改正相続税法による基礎控除額(相続税が課税されない最低限度の財産ライン)の縮小などによって、税理士業界において成長が継続している分野です。
最近は相続税専門税理士法人によるインターネット広告を頻繁に見かけるようになっています。
法人税・所得税の申告を中心に行う税理士事務所は相続税申告業務に従事する頻度が少なく、上記のような相続税申告税理士法人との経験上の差が大きくなってきているともいわれます。
⑷ 税務調査・税務争訟対応
税務調査対応は、対象企業の経営環境や経営者の個性、業界慣行、担当する調査官の能力経験に大きく左右されるとともに、対応する税理士の経験によって調査結果に大きな差が生じる可能性があります。
通常は、税務署勤務経験者(いわゆる国税OB税理士)の専門分野であると言われていますが、現職当時の顔だけで指摘事項が少なくなる時代ではなくなってきており、より審理面で対等に議論できる税務署勤務経験者の存在が必要になってきています。
⑸ 専門業種対応
例えば、非営利企業(公益法人など)は、法人税の課税対象業種が限定されることや、消費税の計算方式が独特であるなどの各種の考慮をしなければ、申告業務を円滑に遂行することができません。
また、営利企業であっても、製造業であれば原価計算の知識が、建設業であれば建設業会計の知識が必要になります。
更に、クリニックの開設を志望する医師を開業前から支援し、医業は税務においても特殊な規定があることから、税務分野についてもカバーしてアドバイスをすることを専門としている税理士事務所があります。
⑹ 経営・財務コンサルティング
税務申告は過去の実績の事後処理として行うものであり、これを「過去会計」と言うことがありますが、経営者が必要な情報は、過去の実績を踏まえて未来の需要をどのように予測するかにあり、そういった「未来会計」の指導を行う税理士事務所があります。
また、上記のクリニックを例にすれば、出店計画やターゲットとする患者層の設定などのコンサルティング業務も考えられるでしょう。
更に、企業の成長に応じて、海外展開・株式上場支援といった分野を展開する税理士事務所もあります。
⑺ 創業支援・資金調達
創業に当たっては実現可能性のある経営計画の策定とともに、それを実現するための資金面の裏付けが必要となりますが、開業前後は自己資金に限りがあることが通常であり、金融機関から資金を調達する業務が何より重要となります。
また、開業後においても、新たな事業を行う場合、多店舗(海外)展開する場合などにはまとまった資金需要が生じます。
中小企業の利害関係者は主に税務署と金融機関ですが、両者の審査ポイントは同一ではありません。
税務署は利益を少なく見せているか(脱税)に着目しますが、金融機関は利益を多めに見せていないか(粉飾)に着目します。
このように、利害関係者の審査ポイントをあらかじめ把握した上で、審査担当者が納得しやすい財務資料を作成することも税理士業務から派生する業務のひとつといって良いでしょう。
⑻ 事業承継・M&A
人間の命には限りがあり、必ず次世代にバトンタッチする必要があります。
また、会社(法人)は継続企業が前提ですが、時代のニーズに対応し続けなければ衰退してしまいます。
このような数年から十年単位で対応すべき企業の一大事については、税務面・企業法務面における誤りは許されず、誤ればそれを将来にわたって背負うことになります。
特に最近は、経営者の高齢化が産業界の懸案事項になっており、こういった事業承継やM&A (Mergers(合併)and Acquisitions(買収))に対する支援業務の需要が増加しています。
こういった業務は、税務知識がひととおりあるだけでは支援は難しく経験の蓄積が必要であることや、金額的規模が大きく失敗が許されないというプレッシャーが圧し掛かる業務ですので、付け焼き刃による対応は税理士にとっても大きなリスクとなります。
3.専門分野、得意分野、経験豊富な分野以外を頼んでしまうデメリットとは
税理士には納税者が想像する以上の専門分野があり、税理士のこれまでの経験によって得意分野・経験豊富な分野が異なることをご説明しました。
それでは、こういった分野を意識せずに、ただ「税理士資格があるから」という漠然とした理由で顧問を依頼した場合にはどのような不都合が生じるのでしょうか。
税理士もプロフェッショナルである以上、顧客からの問いに「わかりません」と言うことをためらいます。
そうすると、得意でない・経験がない(薄い)にもかかわらず、さも得意である(経験が豊富である)ように誤った内容を回答されてしまい、後日の税務調査で処理の誤りを指摘されて、相談をした納税者がその不利益を受けるという不測の事態が想定されます。
したがって、顧問を依頼する場合には、その税理士が自社のニーズについて経験豊富であるか否かをあらかじめ確認する必要があります。
4.専門分野以外の税務処理は可能か
それでは、その税理士が自社のニーズとは専門分野・得意分野が異なるので、顧問を依頼してはいけないかというと、そうとも限りません。
最近は税務実務の高度化・専門化から、昔ながらの「1人の税理士がワンストップで対応します!」といった形態ではなく、様々なニーズに応えられるように、専門分野・得意分野がそれぞれ異なる税理士を集めて税理士法人を組織化しているところも多くなっており、そういった事務所に依頼することで、全体的に高水準で幅広いサービスの提供を受けることができます。
また、以下のような、その税理士法人の内部では解決できない問題が発生した場合には、そのニーズの都度、提携する弁護士・司法書士・公認会計士などと協働して解決に当たる体制が構築されている事務所であることが理想的といえるでしょう。
・得意先と金銭トラブルになりその解決に当たってほしい(弁護士)
・企業を買収したいが相手先の企業価値を算定したい(公認会計士)
・役員変更その他の登記処理を依頼したい(司法書士)
5.専門分野に精通している税理士の見つけ方
自社のニーズに合致した専門分野に精通している税理士を見つけるには、その税理士が運営しているホームページを確認することはもはや必須と思われますが、ホームページ上のみ「専門のフリ」「得意なフリ」をしていないとは限りません。
そこで、例えば以下の視点から、その税理士の専門性や得意分野を「質問・ヒアリング」して確認を行うという方法があります。
・候補となる税理士と面談して自社の業界やニーズについてのニッチな話題を予告なしで持ち出してその反応(対応力)を見る。
・候補となる税理士が執筆した書籍や専門誌の内容(タイトル)を確認する。
・候補となる税理士が発信するコラムやSNSなどがあれば、それを過去に遡って閲覧して発信内容を確認する。
検索すれば、精度はともかく大方の情報は容易に入手できる時代です。
また、通信技術の発達により、自社との場所的な近接性が必ずしも必須ではない時代です。
少しのエネルギーを投下すれば、自社のニーズに合致した専門分野を持ち、その経験が豊富な税理士を見つけることは可能ですし、これまでにご説明したような視点から、その見つけ方も変化しているように考えられます。
ジー・エフ税理士法人では、法人税や所得税、相続税など各分野に突出した税理士や、国税当局の視点を持つ国税OB税理士が在籍しております。
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