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【個人も調査対象に?】仮想通貨の税務調査の内容とその対応方法について
「税務調査」と聞くと、会社の経営者や一部の資産家だけに対するものと思いがちですが、実はそうでもありません。普通の会社員や定年退職した人に対しても、税務調査が行われることがあります。
特に最近は、ビットコインをはじめとする仮想通貨の急騰により、いわゆる「億り人」が年齢や職業などに関係なくあちこちで生まれており、その中には残念ながら無申告でそのまま放置しているケースもめずらしくありません。
そういった人たちを対象に、税務署による税務調査が本格的に行われつつあります。
そこで本記事では、仮想通貨の税務調査に焦点を絞り、問題になる点やその対処法、そして万が一の場合の税理士に探し方について解説していきます。
1.個人の税務調査が迫っている
2021年10月3日付の日本経済新聞によると、国税局はビットコインをはじめとする仮想通貨の取引に監視を強めており、関東地方では個人を対象に大規模な税務調査が行われ、すでに数十人が合計約14億円の申告漏れを指摘されたと報じています。
<参照元>日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC265U10W1A820C2000000/
ネットで調べるといくらでも出て来るように、仮想通貨の税務処理において税法上グレーと思われる節税策はいくつもあり、それらはすでに日本中に広まっています。
今回の大規模な税務調査は、無申告者に対してだけでなく、このようなグレーゾーンを用いた節税策に対しても網を掛ける狙いがあったものと推測されます。
こういった税務調査は関東地方のみならず全国に波及しており、仮想通貨の税務調査は個人にもじわじわと迫っています。
2.仮想通貨の利益が少額なら申告しなくても大丈夫?
「仮想通貨の取引で得た利益が少額なら申告しなくても大丈夫だろう」と思う人もいるかもしれませんが、果たしてそうでしょうか?
基本的には20万円以内ならOK
国税庁のホームページをのぞいてみると、「上記の所得(仮想通貨の売却等による所得)を含め年末調整を受けた給与所得以外の所得が20万円以下の方は、確定申告は不要です。」と書かれています。
<参照元>
国税庁副収入などがある方の確定申告
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/kakutei/fukugyo.htm
上記資料より、会社員など給与所得のある人が、副業として得た仮想通貨の所得が20万円以下の場合には確定申告をする必要はありません。
20万円以内でも申告しなければならないケース
仮想通貨の所得が20万円以内でも、申告しなければならない場合があります。それは、たとえば以下のようなケースです。
・年の途中で退職した元会社員の場合
・個人事業主の場合
・他の所得と合わせると所得が20万円を超える会社員の場合
年の途中で退職した元会社員の場合
年の途中で退職した会社員は、年末調整が行われていません。たとえ仮想通貨の取引による所得が10万円しかなかったとしても、確定申告をして納税をしなければなりません。
個人事業主の場合
個人事業主は給与所得者ではありません。そのため、仮想通貨の取引による所得が20万円以下であっても事業所得と合算して確定申告をしなければなりません。
他の所得と合わせると20万円を超える会社員の場合
給与所得以外に不動産所得などがある場合は、その所得金額と仮想通貨取引による所得を合算して20万円以下であれば申告する必要はありませんが、20万円を超える場合は確定申告をして納税をしなければなりません。
税務署にはすべての情報が筒抜け
国税局は、ほぼすべての仮想通貨取引所から年間取引データの提供を受けています。これらはすべてデータ化されており、国税局によって監視されているため、金額の大小にかかわらず、すべての情報はチェックされています。
「少額なら大丈夫」という訳ではなく、取引内容をチェックしながら税務調査の有無やタイミングを検討していると考えておいた方が良いでしょう。
3.実は税理士でも難しい仮想通貨の取引
仮想通貨の取引が活発になったのはここ数年のため、税の専門家である税理士でも詳しい人は限られます。それ以外にも、税理士ですら仮想通貨の取引が難しいと感じるのは以下の理由のためのです。
・取引の種類が多すぎる
・仮想通貨の種類が多すぎる
・取得原価の計算が複雑すぎる
取引の種類が多すぎる
仮想通貨の取引は、単なる売買だけでなく、暗号通貨同士の交換やマイニング、物品の購入や外貨での売買など多岐に渡っており、これらを一つ一つ確認していくことは専門家であっても大変手間のかかる作業となります。
仮想通貨の種類が多すぎる
仮想通貨は、現時点で確認できるだけでも6,000以上あります。したがって、いかに税理士であっても、そのすべてについて詳しく知ることはまず不可能でしょう。
取得原価の計算が複雑すぎる
取引所によっては、年間取引報告書を発行していない場合もあるため、一つ一つの取引をチェックして取得価格を計算しなければならないことがあります。それ以外にも、取引所そのものがなくなってしまった場合や相対取引で購入した場合、また外貨建てで購入した場合などはすべて手計算で取得原価を計算しなければなりません。
このような作業は、たとえ税理士であっても決して楽な作業ではありません。まして普通の人であれば、これがいかに大変な作業であるかは言うまでもありません。
4.そもそも税務調査とは
税務調査とは、税務署をはじめとする徴税機関が納税者の申告内容を帳簿などで確認し、誤りがあれば是正を求める調査手続のことを言います。
この税務調査は、以下の2種類に分けられます。
・任意調査
・強制調査
任意調査
任意調査とは、税務署などの徴収官によって納税者の合意の下で行われる税務調査のことを言います。
通常の税務調査はほとんどがこの任意調査で、実施される場合は事前に納税者もしくは税理士に日程などの連絡を行ってから実施されます。
強制調査
強制調査とは、裁判所の令状を得て強制的に調査を行い、資料などを押収する税務調査のことをいいます。
強制調査はおもに国税局査察部(いわゆる「マルサ」)によって行われ、検察庁に脱税を告発することを目的としています。
これまでにFXによる脱税で強制調査が行われた例はいくつもある事から、今後は仮想通貨での脱税にも金額や悪質性によっては強制調査が行われることが推測されます。
5.個人の税務調査では何が問題になる?
では、実際に仮想通貨の税務調査が行われた場合、いったい何が問題になるのでしょうか?
仮想通貨に関して、税務調査で一般的に問われる点は、おもに以下の3点です。
・損益計算が適切に行われているか
・不当に税金を安くする行為がなされていないか
・取引の計上漏れはないか
損益計算が適切に行われているか
仮想通貨の計算は、取引が増えれば増えるほど複雑で難しくなります。特に、取得価額や売買価額が外貨建てになっている場合は、一つ一つを時価に換算しなければなりません。
不当に税金を安くする行為がなされていないか
正しく計上された経費は何の問題もありませんが、不当に税金を安くするような不自然な取引や行為が行われていた場合には、その内容について厳しく問われることがあります。
仮想通貨の取引については、税理士でも判断が分かれるものもあるため、ネットなどで聞きかじった節税策などは安易に使わない方が良いでしょう。
取引の計上漏れはないか
現金換金業者を利用した相対取引や、ICO取引のように、損益計算の対象から漏れやすい取引について、計上漏れがないかどうかが調べられます。
悪質性を疑われてしまうと、最悪の場合重加算税の対象となってしまいます。
そうならないようにするために、計上漏れがないように何度もチェックしておきましょう。
6.仮想通貨に強い税理士の探し方
仮想通貨の申告に自信のない方や、申告後の税務調査が心配な方などは、専門家である税理士に申告を依頼した方が良いでしょう。
しかし、医師に専門があるように、税理士にもそれぞれに得意としている分野があり、すべての税理士が仮想通貨に詳しいわけではありません。
ですから、ホームページで確認したり、電話で直接聞いてみたりするなどして、仮想通貨に強い税理士に依頼するようにしましょう。
7.終わりに
仮想通貨の税務調査は、少額だったら大丈夫ということはありません。税務署はほぼすべての情報を把握しているため、仮に今年調査がなかったとしても、来年以降もずっと調査がないというわけではありません。
スッキリした気持ちで毎日を過ごせるように、たとえ少額であっても、申告と納税は必ず済ませておきましょう。
また、申告が難しいと感じる方や、税務調査が心配な方は、税の専門家である税理士に依頼するのがお勧めです。専門家ならではの視点に立ったアドバイスがもらえますし、節税により税額が減る可能性もあります。ただし、すべての税理士が仮想通貨に詳しいわけではないため、仮想通貨に詳しい税理士に依頼することが大切です。
仮想通貨の税務計算は複雑で難しい場合が多いかと思います。
仮想通貨の税務申告や税務調査でお困りなら、国税OB税理士(国税出身税理士)が在籍し、税務調査対応、仮想通貨の申告にも対応している当税理士法人までお気軽にご相談下さい。
国税OBパートナー税理士
林 浩二
国税局において、大規模法人の調査審理や組織再編税制・再建支援に係る事前照会担当など専門知識を要する審理事務に長年従事するほか、上場企業など大規模法人の調査事務にも従事。 組織再編税制、調査審理、課税要件判断、争点整理を得意とする。 ExcelのVBA機能を用いてデータ入力の自動化システムを構築するなど、業務効率化のサポート等にも強みをもつ。
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