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「資産税」はどんな税金?資産税の専門家を頼るべき理由とは
1.資産税とは
所得税には「所得税法」、消費税には「消費税法」という法律が存在しますが、資産税に「資産税法」という法律は存在しません。
資産税は、課税の対象が「資産」である税金の総称であり、資産税の範囲は必ずしも明確ではありません。
しかし、税理士業界や国税(地方税)業界では、おおむね以下の税金を資産税の範囲として考えています。
⑴ 相続税
人が死亡することによって(相続人に対する)相続や(遺言による)遺贈がなされた場合に課税される税金であり、相続税法において規定されています。
富が特定の者に集中し過ぎないようにするという目的があるとされています。
⑵ 贈与税
生存している者から生存している者に対して贈与がなされた場合に課税される税金であり、相続税と同様に相続税法において規定されているもので、贈与税がなければ相続税は成り立ちません。
贈与税が存在せず相続税のみ存在すれば、生前中に可能な限り親族に贈与することによって相続税の課税を免れようとすることにも繋がるため、「贈与税は相続税の補完税」と言われています。
⑶ 譲渡所得に対する課税
代表的には不動産と有価証券ですが、資産を譲渡したことにより生ずる所得(キャピタルゲイン)に対して課税されるもので、所得税法及び関連する租税特別措置法において規定されています。
一般的な「売買」のみならず、「交換」「買換え」「(国などに対する)収用」なども譲渡所得の範囲とされています。
⑷ 登録免許税
不動産などを譲渡して登記名義を変更するために納付が必要な税金です。
他にも、弁護士・税理士などの資格登録のためにも納付が必要です。
⑸ 固定資産税(都市計画税)
固定資産を保有している者又は事業用資産を保有している事業者に対して課税されるもので、地方税法において規定されています。
上記⑴~⑷の違いは、固定資産税は地方税であり資産が所在する市区町村が課税します。
2.なぜ「資産税」に注目が集まっているのか。
納税者がイメージする税金は、個人又は法人が得た儲けに対して課税する所得税・法人税、又は、物やサービスの提供に対して課税する消費税ではないでしょうか。
たしかに上記の税金の税収に占める割合は多く、これらが我が国の基幹的な税金であることに変わりありませんが、税収のインパクトは必ずしも高くないにしても、最近は以下の背景から「資産税」の注目が高まっていると言われています。
⑴ 相続税の課税対象者が拡大している
過去には、相続税を考慮しなければならない死亡者は死亡者数全体の4%程度と言われており、相続税はごく上位の富裕者層のみに関係する税金でした。
しかし、平成27年から施行された改正相続税法により、相続税が課税されない財産価額のハードル(基礎控除額)が大幅に切り下がり、上記の割合が8%程度に上昇しています。
これは全国平均であり、地価の高い都市部のように、自宅と多少の預貯金(保険金)があれば、それだけで相続税の申告が必要になるエリアも存在するようになりました。
また、最近は少子化の進行で子がいない親族関係も珍しくなく、想定外に親族の相続が関係するといった事例が多く発生しています。
このように資産税の代表格である相続税が納税者にとってより身近になったことが資産税が着目されるようになった背景となっています。
国税サイドでも、税収確保の観点から富裕層に対する課税を強化しようとする各種の取組(国際間の情報共有など)を行っており、これも資産税が注目を集める背景となっています。
⑵ 頻繁ではないが登場すると影響が大きい
資産税は資産の移転に着目して課税される税金であり、それは個人のみならず法人にも該当します。
最近は法人の機動的な組織再編に制約を課さないような税制が整備されてきており、方法を間違えなければ税負担を最小限にしながら効率的な企業経営を行うことができるようになりました。
また、個人であっても不動産などの譲渡は頻度は多くなくても長い人生においては経験することもあるでしょう。
そういった個人の人生や会社の歴史のエポックメーキングな事象において資産税が関係することになりますが、頻度は低いながら発生する所得は膨大で、税金によって手取金額が大きく変化します。
このように継続的に発生しないものの、発生すると影響が大きいことが資産税の特徴です。
⑶ 失敗が許されない
事業による所得であれば毎年申告を行いますから、仮にその年に誤った処理を行っていたとしても翌年において是正できるかもしれません。
しかし、資産税は上記⑵の特徴から「一発勝負」の性格が強く、処理や選択の意思決定の誤りを将来において是正することが極めて困難な性格があります。
また、多数ある適用要件の1つを充足しなかっただけでも、その特例が全く適用できないという「All or Nothing」の性格も持ち合わせています。
すなわち、資産税は他の税金に比べて「怖い」税金であり、専門家であっても付け焼き刃で対応することが禁物であると言われています。
3.資産税を専門分野・得意分野にしている税理士法人・税理士事務所の特徴
⑴ 農耕民族と狩猟民族
税理士事務所(法人)の中には、相続税を中心とした資産税を専門にしている事務所があり、最近は増加傾向にあるようです。
資産税専門といっても、顧客から依頼を受けて税務申告を行い事前の節税対策も手掛けるという点では、所得税や法人税の申告を取り扱う一般的な税理士事務所・税理士法人と同じといえます。
しかし、所得税・法人税の申告業務は、顧問契約を締結したクライアントに毎期継続的に関与して定期的に申告書を提出することになりますが、相続税に代表される資産税は定期的・継続的に同じクライアントに対してサービスを提供することはなく、常に新しいクライアントを開拓(営業活動)して業務を受注してサービスを提供していかなければならないという特徴があります。
⑵ BtoB・BtoC
所得税・法人税中心の税理士事務所は、同じクライアントの原則として同じ担当者を相手に業務をすることになり、その担当者は事業者(又は事業者の従業員)であることが通常です。
そうすると、一度人間関係が構築できれば、円滑かつ継続的に処理を行うことが可能ですし、申告業務は原則として毎年同じ内容であることから、実務を習得すれば効率的な業務遂行も可能であるともいえます。
また、相手が事業者であることから、こちらの業務都合がある程度受け入れられることが期待できるかもしれません。
しかし、相続税に代表される資産税を扱う税理士事務所は、その時々に異なるクライアントを相手に業務をすることになりますし、その相手は一般納税者(例えば相続人)であることが多く、事業者に比して顧客対応がセンシティブに陥りやすい(個別の事情もあり顧客対応が難しい)という宿命があります。
さらに相続人が同じ方針でまとまっていれば良いですが、相続人同士が対立しているケースもあり、板ばさみに遭うといったことも考えられます。
このように、所得税・法人税中心の税理士事務所が「BtoB(Business to Business)」であるのに対して、資産税を扱う税理士事務所は、「BtoC(Business to Consumer)」なりの苦労があるといって良いといえます。
⑶ 税目横断的な知識を必要とする
所得税・法人税中心の税理士事務所は、基本的には毎年の「記帳・決算・税務申告」のローテーションを繰り返すことになります。
しかし、資産税を扱う税理士事務所は、相続(事業承継)というゴールに向けて、あらゆる種類の税金を考慮した上で対策を構築し、場合によっては、遺言・信託・会社設立・収益不動産の購入といったアドバイスを他の専門家(弁護士・司法書士・不動産業者など)と協働して行うことになります。
そういった点において、資産税全般に対する知識に加えて、他の税目の知識の強化を図るとともに、他の専門家とのチームを主導するようなイニシアティブを発揮できる能力が求められると言って差し支えないでしょう。
4.資産税業務を依頼する場合の注意事項・必要項目
⑴ 事後ではなく事前に依頼する
相続税に代表される資産税は、事後(相続税であれば被相続人の死亡後)に選択できる対策は限られており、事前(生前)の早い時期から着手することによって多様な対策の選択肢を得ることができるという性格があります。
もちろん、相続税申告という事後処理のみを依頼するために資産税専門の税理士事務所の門を叩くことも良いのですが、将来的な相続税の負担が見込まれるといった場合には、できるだけ早期に専門的なサービスを提供する事務所の選択を行うことをお勧めします。
⑵ 業務範囲を確認する
資産税を扱う税理士事務所といっても、相続税を例にとっても、組織・業務範囲について以下のような違いがあります。
❶ 「相続税申告しか受注していない」という申告業務に特化する事務所
❷ 資産税に特化する部門の他に所得税・法人税中心の部門を備える(税金の種類で部門を分けている)事務所
❸ 相続税(事業承継)対策のみ行い事後の申告業務は受注しない事務所
❹ 他の専門家が行った相続税申告書の草案についてセカンドオピニオンを行う事務所
❺ 過去に行った相続税申告の納め過ぎについて還付申告(更正の請求)を専門に行う事務所
例えば、❶の場合には相続税申告後の「収益不動産の確定申告」や「相続財産を譲渡した場合の確定申告」が依頼できない可能性もありますので、その事務所に任せられる業務範囲については、所得税・法人税中心の税理士事務所以上に詳細に確認しておいた方が良いでしょう。
⑶ 法人税・消費税の知識・経験値は薄い可能性がある
幅広い税金を扱う反面、所得税・法人税中心の税理士事務所の職員に比して、法人税・消費税に関する業務知識や経験が希薄である職員が担当者になる可能性があり得ます。
特に消費税については、資産税を取り扱う者にとって馴染みが薄いことが多いですが、例えば、相続対策のために法人を設立した場合には、毎年の法人税・消費税の申告は不可欠ですし、物件購入のタイミングや購入物件の用途(住宅かテナントか)によって、消費税の処理は大きく異なります。
相続税対策において法人設立や賃貸不動産購入が想定される場合には、毎年の法人税・消費税の申告を依頼できる部門を併設する事務所の方が好都合と言えます。
5.資産税を専門分野・得意分野にしている税理士法人・税理士事務所の見つけ方
⑴ 提携先との関係を利用する
候補となる税理士事務所(法人)のホームページだけでは具体的なサービスの範囲や関与度合いがわからないことも多々あります。
例えば、以下のような自己又は被相続人との関係先から信用(取引実績)のある税理士事務所の紹介を受けるといった手段が考えられます。
・被相続人が保有していた有価証券を預けていた証券会社、もしくは預金を預けていた銀行など金融機関からの紹介
・被相続人が保有していた賃貸不動産の管理会社からの紹介
・被相続人と何らかのつながりがあった弁護士事務所からの紹介
・相続対策など同じような悩みを抱える知人からの紹介
⑵ 取扱実績や提携先を確認する
最近は、候補となる税理士事務所(法人)のホームページにおいて、資産税に特化しているような雰囲気を出していても所得税・法人税中心の申告業務が業務の中心であるなど実際にはそうでもないことも考えられます。
また、資産税に注力していれば、ブレイン(弁護士・司法書士・不動産業者など)との提携を相応に行っているのが一般的です。
これらを含めて、候補となる事務所の担当者と面談した際には、過去のその事務所の取扱事例などの具体的な経験談を聞き出すことによって、それが自己の依頼したい業務に活かされるか否かを見極める必要があります。
⑶ 資産税を含めた業務バランスの取れた事務所を選択する
相続財産は自宅・多少の預貯金・上場有価証券(特定口座)・保険金のみというシンプルな財産構成による事後的な相続税申告のみの依頼であれば、相続税申告のみを受注する事務所に依頼した方が報酬のバランスに照らして理想的かもしれませんが、
同族会社の株式がある、幅広く賃貸不動産経営をしていたなど多少混み入った事例の場合には、所得税・法人税の経験を踏まえた対応を期待する場面があるでしょうし、相続税申告後の関与も依頼したい場合には、相続税申告のみを受注する事務所では一気通貫とはいかないかもしれません。
このように、自己の現在及び将来的に依頼したい業務範囲に合わせて、それに対応する陣容を備える税理士事務所を選択する必要があると言えるでしょう。
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