コラム

税務調査で作成される質問応答記録書とは?国税OB税理士が対処のコツも交えて解説!

2023.05.31
  • 税務調査
目次

この記事の監修者

會田 敏哉

国税OBパートナー税理士・米国公認会計士

税務調査で作成される質問応答記録書とは?国税OB税理士が対処のコツも交えて解説!

  税務調査の際に作成する「質問応答記録書」とは、重加算税が賦課される可能性があるときに作成されます。 また、物証がない場合にも記録を残すために作成されることがあります。 税務調査についてある程度の知識があっても経営者や経理担当者で「質問応答記録書」という言葉に耳慣れしていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。 本記事では、あまり知られていない「質問応答記録書」について解説します。  

質問応答記録書とは

質問応答記録書とは、税務調査において調査官から納税者への問答形式によって実施・作成されるもので、これは調査を受けた側ではなく調査官によって作成されるものになります。 「問答形式」と聞いてしまうと、何か特別な質問や調査官の意図を探りたくなります。 自社にとって不利な扱いになるのではないかと不安を感じる方もいらっしゃると思いますが、実際は問答形式であっても回答する側は経営者や経理担当者です。 自社にとって有利なことだけを応えることもでき、回答方法によっては調査官が意図せず「いいとこどり」をする可能性もあります。 調査官も人間ですので、自分たちが不利になるような内容を積極的に記録として残す可能性は低いということです。  

質問応答記録書の必要性

質問応答記録書は行政文書に該当し、主に下記の2つの必要性から実施しています。 ● 課税要件の充足性の確認 ● 調査内容の正確性を確保 課税要件の充足性の確認とは重加算税が賦課される可能性がある場合、調査内容の正確性は客観的な根拠書類がない場合に必要です。 税務調査における調査官の質問内容及び質問を受けた経営者や経理担当者の回答内容について、根拠事実となるものを文書化し、納税者へ確認手続をとることで証拠書類となります。

1. 課税要件の充足性の確認

課税要件の従属性の確認とは、重加算税が賦課される可能性がある場合を意味しています。 重加算税とはいわゆるペナルティの一つで、ペナルティが発生した根拠となる事実の確認必要です。 疑わしい場合でも、証拠がなければ重加算税を徴収することはできません。 単純な計算ミスから悪質性が高いものまで、判断するのは調査官ですから納税者は正しい情報を提供する必要があり、調査官が調査前に予測していた内容と経営者が応える事実が異なることもありますので、直接回答できる唯一の期待と自覚し、質問には正しく答えましょう。

2. 調査内容の正確性を確保

調査で得た内容であっても、証拠書類がない場合は下記の内容を記載して正確性を確保しています。 ● いつ、どこで ● 誰と誰が ● 誰に対して ● なぜ ● どのような方法で ● 何をしたか ● 結果はどうなったのか 問答形式の質問内容にも、上記のポイントを中心に回答でいれば問題ないと言えます。 納税者は、調査後の結果が必ず納得できるものであるとは限りらず。納得できない場合は訴訟を起こすこともあります。 訴訟の内容にもよりますが、争点が質問応答記録書の記載内容に関連性がある場合、国税当局は重加算税をはじめとする課税処分の適法性を立証するために、質問応答記録書を証拠として活用するのではないかと考えられています。  

質問応答記録書の回答時における注意点

質問応答記録書の回答時で注意しておきたいポイントは下記の通りです。

1.沈黙はしない 2.質問されている内容にのみ回答する 3.質問応答記録書は作成されないこともある 4.質問応答記録書の控えは発行されない

1.沈黙はしない

質問応答記録書は、調査官からの質問に回答した内容をもとに記録が残ります。 質問内容に応えられず、沈黙してしまった場合は「沈黙した」という内容の記録が残ります。 単純に何を質問されているのかわからず黙ってしまうケースもありますが、調査官は沈黙を経営者にとって「聞かれたくないことを聞いている。何かあるはず。」と捉えてしまうので、質問内容がわからない場合は、改めて聞き直すことが必要です。 また、質問を聞き直すことで回答する側は、冷静になる時間を確保できます。 自分自身に余裕を持たせるテクニックのひとつとして活用するのもよいでしょう。

2.質問されている内容にのみ回答する

あまり多くのことを回答しすぎると、回答した内容から新たな質問が出る可能性があります。 話すことが好きな経営者の方であれば、質問されると頼られていると思い、話過ぎる場合があります。 税務調査を誤解なく簡潔に終了させるには、質問されている内容にのみ応えることが必要です。 冒頭でも触れているように、調査官が「いいとこどり」する可能性があり、必要以上に経営者から情報提供することは「いいとこどり」されるリスクが高まります。

3.質問応答記録書は作成されないこともある

質問応答記録書は調査が発生すれば100%実施されるものではありません。 証拠書類等で客観的な証拠が証明され、課税要件の充足性が確認できると判断される場合は質問応答記録書は必要ないのです。

4. 質問応答記録書の控えは発行されない

質問回答記録書の控えは発行されず、撮影することも禁止されています。 質問応答記録書を作成する目的は、調査担当者と回答者の応答内容の記録を調査関係書類とするために作成するものです。 調査担当者が作成する行政文書であり、回答者に交付することが目的ではなく、回答内容は調査官が記録する質問回答記録書にのみ記録が残り且つ証拠書類となるため、その場しのぎで回答することはマイナス要素しかないといえます。

5. 質問応答記録書の開示請求はできる

重加算税の理由に納得がいかず、訴訟になった場合は質問応答記録書の開示請求ができます。 開示請求は「個人情報保護法による開示」を「納税者本人」が行うことで可能です。 ただし、開示するには手数料がかかるため料金については事前に確認しておく必要があります。  

質問応答記録書は、回答者の署名が必要

問応答記録書には回答した方の署名が必要です。 自書によるものが必要で、ゴム印等は認められていません。 ゴム印は、回答した本人でなくても押印することができるため、必ず自書であることが求められます。 なお、調査に立ち合いをしている税理士には署名が求められないため、回答する担当者は責任の所在を鑑みて経営者か準ずる方が望ましいといえます。  

最後の質問には伝えておきたいことを話す

調査官は最後に「最後に何か付け加えることはありますか」という質問をします。 特に質問されてはいないものの、どうしても伝えておきたいことがある場合は、このタイミングで話しておいても問題ありません。 また、一連の流れの最後に記載した内容を確認し、間違いがないかと問われます。 もし言っていないことを記載されていたり、伝えたいのに書かれていなかったりする場合は修正を求めることができます。  

まとめ

質問応答記録書は、重加算税の課税の検討や証拠書類がない場合について、客観的な根拠書類の変わりとなる役割があります。 税務調査時には、第三者が作成した客観的書類が提出できるとベストですが、必ずしも準備ができるものではありません。 調査官は、税務調査で最もポイントとなる部分の証拠書類を求めます。証拠書類がない場合には、問答形式で記録を残して証拠とします。 質問されていない内容を自ら話す必要はありませんが、伝えておきたいことを話しておくチャンスです。 万が一、訴訟に発展した場合には質問応答記録書の内容が証拠書類になる場合があるので、その場しのぎの回答はしないようにしましょう。 どうしても不安なことがある場合には、事前に税理士に相談しておくことも大切です。   ジー・エフ税理士法人では、税務調査における国税OB税理士による模擬調査や税務署への事前確認、国税当局の視点を取り入れたサポートなどを行っています。 国税OB税理士をお探しの方、一般的なご相談などお気軽にコチラまでお問い合わせください!  

ジー・エフ税理士法人のメンバー

税務調査対応・節税対策・税務リスクなど
税務課題のご相談、お問い合わせはお気軽にご連絡ください。
各分野で経験豊かな税理士が幅広い税務に対応いたします。