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税務調査が入る確率はどのくらい?個人と法人の確率について解説
事業者の税務申告が適切であるかを調べるため、国税庁は税務調査を実施しています。
本記事では、法人・個人事業主のもとに税務調査が入る確率を解説します。
また、税務調査が入りやすい事業者の特徴もあわせて紹介しています。
税務調査は、いつ訪れるか分かりませんので、いざという機会に備えておきましょう。
税務調査が入る確率
はじめに、法人や個人事業主に税務調査が入る確率を解説します。
対象者はランダムで選定されるわけではないため、ここで示す確率はあくまでも目安です。
また、近年の税務調査にみられる実施傾向も説明します。
法人3%・個人事業主1%が目安
平成28年時点のデータでは、税務調査が入る確率は法人が3.2%、個人事業主が1.1% です。
この結果は「実際の税務調査件数÷対象の法人数」または「実際の税務調査件数÷税務申告をした個人数」の計算式で求められています。
法人、個人事業主ともに確率自体は低い数値を示していますが、国税局は事業者の経営状況や業種など、複数の条件から調査対象を選定します。
そのため、確率はあくまでも目安だと認識し、税務調査を受ける機会がいつ訪れても対応できるよう準備をしておくことが重要です。
参考:国税庁「税務行政の現状と課題」
中長期的には減少傾向
税務調査が入る確率は、中長期的な視点の直近30年ほどでは減少傾向にあります。
申告件数や法人数の増加に対して、税務調査を実施する人員が追いついていない現状です。
国税局の定員数…2.4%増加
所得税の申告件数…27.7%増加
法人数…30.8%増加
(平成元年から平成29年にかけての推移)
また、経済取引の国際化・高度化が進み、税務調査が複雑で困難になったことも原因と考えられています。
世界中で高度な取引が行われる現代では、資金や税の流れを把握しにくい場合があるのです。
参考:国税庁「税務行政の現状と課題」
コロナ禍を脱して上昇傾向
中長期的には減少傾向にある税務調査は、コロナ禍を脱した現在では再び増加傾向です。
2020年からのコロナ禍が影響して実施件数は大きく減少していましたが、企業活動が回復し感染対策は個人の判断に委ねられたことで回復基調にあるためです。
また、2020年4月から9月にかけては感染拡大防止のため税務調査の訪問自体が中止され、実施回数に遅れが生じています。
その遅れを取り戻すべく、今後は国税局が実施回数を増やす可能性があります。
参考:日本経済新聞「コロナで中止の訪問税務調査、国税が10月から再開」
税務調査で8割が修正申告
税務調査を通じて申告漏れやミスを指摘され、申告内容を修正する割合はおよそ8割です。
売上や所得を過少申告したことで不当に少ない額を納税していた場合は、修正申告書の提出と不足額の納税を求められます。
また、故意の申告漏れが発覚した場合は、本来の税額負担に加えて重加算税が課されます。
税務調査を通じて重加算税が課される割合はおよそ2割程度です。
このように、税務調査は入る機会こそ少ない一方で、いざ入れば申告漏れやミスを指摘されるケースが多いといえます。
税務調査が入りやすい業種は?
続いて、税務調査が入りやすい業種について解説します。
税務申告に関する過去の不正実績や、業種ならではの取引にみられる特徴など、複数の要因をもとに税務調査の対象が決められます。
ご自身の業種は当てはまるか一度確認してみましょう。
法人の税務調査実績
実際の税務調査で申告漏れが見つかった法人の業種について、以下の通り不正発見割合が高かった10業種をまとめました。
なお、コロナ禍中とそれ以前の比較のため、令和3年度と令和元年のデータになっています。
順位 | 令和3年 | 令和元年 | ||
業種目 | 不正発見割合 (単位:%) |
業種目 | 不正発見割合 (単位:%) |
|
1 | その他の道路貨物運送 | 32.8 | バー・クラブ | 63.5 |
2 | 医療保健 | 31.2 | その他の飲食 | 42.9 |
3 | 職別土木建築工事 | 29.6 | 外国料理 | 42.3 |
4 | 土木工事 | 28.7 | パチンコ | 31.5 |
5 | その他の飲食 | 28.4 | 大衆酒場、小料理 | 30.8 |
6 | 化粧品小売 | 28.0 | 自動車修理 | 30.7 |
7 | 美容 | 28.0 | 土木工事 | 30.4 |
8 | 機械修理 | 27.9 | 一般土木建築工事 | 29.1 |
9 | 一般土木建築工事 | 27.3 | 貨物自動車運送 | 28.4 |
10 | 貨物自動車運送 | 27.3 | 美容 | 28.3 |
また、以下は不正1件当たりの不正所得金額が高かった10業種です。
順位 | 令和3年 | 令和元年 | ||
業種目 | 不正1件当たりの 不正所得金額 (単位:千円) |
業種目 | 不正1件当たりの 不正所得金額 (単位:千円) |
|
1 | 情報サービス、興信所 | 72,887 | その他飲食料品小売 | 58,116 |
2 | 自動車・同部品卸売 | 64,723 | 電子機器製造 | 51,970 |
3 | 鉄鋼製造 | 63,696 | 建売、土地売買 | 40,769 |
4 | 運輸附帯サービス | 55,379 | 鉄鋼製造 | 38,745 |
5 | その他のサービス | 52,957 | 不動産代理仲介 | 32,630 |
6 | 建売、土地売買 | 50,098 | 新聞 、出版 | 31,978 |
7 | その他の金属製品製造 | 42,744 | 再生資源卸売 | 28,908 |
8 | 化粧品小売 | 35,521 | くぎ、ボルト、ナット、綿材製品製造 | 27,638 |
9 | その他の不動産 | 34,613 | その他の不動産 | 26,552 |
10 | 印刷 | 34,396 | その他のサービス | 26,026 |
出典:国税庁の発表資料より抜粋
税務調査が入りやすい業種の特徴
税務調査が入りやすい業種にみられる特徴として、大きく3点が挙げられます。
・主に現金での取引を実施している
・モノではなく目に見えないサービスを提供している
・短期間で売上が大きく増加している
現金取引は取り扱いのミスが発生しやすく、取引の証拠を残さないことがあります。
お金の流れを掴みづらいため、税務調査が入りやすくなることが考えられます。
目に見えないサービスを提供する場合は、商品の仕入れや在庫管理がないため経営の実態が捉えづらく、税務調査が入りやすい業種にあたります。
短期間で売上が大きく増加した場合は、納税額が適切であるか疑われることがあります。
そのほか、業種全体に不正が多い、または以前に重加算税を課されているなど、実績に問題がある場合も同様です。
税務調査が入りやすいとされる個人事業主
前項では、税務調査が入りやすい業種について解説しました。
では、個人事業主の場合はどのような特徴を持っていると税務調査が入りやすいのでしょうか。
税務申告の不備や、売上の変動がきっかけとなるケースを中心に解説します。
申告をしていない
そもそも税務申告をしていない場合は、税務調査の対象となる可能性があります。
売上や所得を申告しなければ適切な納税ができず、消費税・所得税逃れにつながります。
税務申告をせず放置しておけば納税義務を回避できるようなことはなく、取引先の申告内容や税務調査を通じて売上は推測可能です。
そのため、申告していない売上や所得がある場合は納税義務を怠っていると疑われ、税務調査を受ける可能性が上がります。
申告漏れが多い業種である
申告漏れが多く発生している業種に当てはまれば、税務調査の対象となることがあります。
国税庁の資料によると、令和3年度で個人1件あたりの申告漏れ所得金額がもっとも高額だった業種は経営コンサルタントでした。
また、2位以降ではシステムエンジニアやブリーダー、商工業デザイナーの個人事業主が高額の申告漏れを起こしています。
そのため、該当の業種に対しては国税庁から厳しい監視の目が向けられ、税務調査の対象になりやすいといえます。
参考:国税庁「令和3事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」
開業して3年程度が経過している
個人事業主で開業から3年が経過した場合は、税務調査を受ける可能性が高まります。
3年間の事業継続に成功していることを踏まえ、売上や利益がある程度順調に伸びているだろう、と国税庁側からは推測されるため、納税額の妥当性を検査する目的での税務調査を受けやすい事業者にあたります。
また、開業2期目までは消費税の納税義務が原則免除され、3期目からは2期前の売上に対して納税義務が発生します。(2期前の課税売上が1,000万円を超えた場合等)
このように、開業から3年以降は税務調査の実施に適したタイミングとみなされます。
売上が1,000万円前後である
1,000万円前後の売上高を申告すると、税務調査の対象となる可能性が上がります。
消費税の納税は、代表的な要件としてその事業年度の2期前の課税売上高が1,000万円を超える事業者に適用される義務です。
特に、1,000万円までわずかに届かない額の売上を申告しているケースでは、消費税の納税義務を回避するために過少申告をしていると疑われる危険性があります。
そのため、不正な行為をせず誠実に税務申告をしていたとしても、売上が1,000万円前後の場合は税務調査を受けることがあります。
売上が大きく増加している
売上が急激に伸びた個人事業主も、税務調査の対象にあたります。
個人事業主で起こりうる例は、本業が忙しく税務申告をおろそかにするケースです。
そこから申告漏れやミスにつながると、売上に応じた適切な納税をしていない可能性や、不適切な経費を計上している可能性が指摘されます。
国税庁は各事業者の売上データを把握しているため、売上に大きな変動が起こると税務調査が入りやすいと考えられます。
不審な経費が多い
個人事業主は経費を適切に使用することで、納税額の負担を削減できます。
しかし、内容や金額面の不審な経費が多いと不適切な使用を疑われ、税務調査を受ける可能性が高まります。
例えば、仕入れと同時に行ったプライベート用の買い物を一緒に経費計上する、あるいは取引先との商談と称して私的な飲食代を経費計上する、などの使い方は不適切です。
何でもむやみに経費計上をすると、税逃れの観点で税務調査の対象となる可能性が高まります。
まとめ
本記事では、税務調査が入る確率や、税務調査が入りやすい業種の特徴を解説しました。
法人と個人事業主のどちらも、その母数に対して税務調査が行われる回数自体は少なく、事業者あたりの実施率はそれほど高くありません。
一方で、国税庁は業種や申告内容など、複数の情報をもとに調査対象を選定します。
そのため、条件が揃えば揃うほど税務調査の対象となる可能性は上がります。
普段から適切な経理処理を心がけ、漏れやミスなく税務申告を毎年行うことでいつ税務調査が入っても困らないように備えてことが重要です。
ジー・エフ税理士法人では、税務調査時における国税OB税理士による税務署への事前確認、国税当局の視点を取り入れたサポートなどを行っています。
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国税OB税理士
平野 克憲
国税局時代は上場企業をはじめとする大規模法人のうち、特に調査が困難とされる特別調査部門における調査事務を担当。 税務調査現場に臨場して証拠・事実の収集を行う現場調査系の調査官としてもキャリアも積み、企業視点での税務調査対策を熟知する強みを持つ。
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