コラム
法人税基本通達7-5-1⑴にいう「原価外処理」とは?
- 法人税

減価償却費については、いわば内部計算によって計上されるものであることから、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額は、償却費として損金経理をした金額のうち償却限度額に達するまでの金額とされています。(法法31➀)
このように、形式的にみる限りは、法人が減価償却資産について費用化した金額につき、「償却費」以外の科目名を用いている場合には、税法上はこれを減価償却したものとして認めないということになりますが、これでは種々実情に即さないことから、法人税基本通達7-5-1では法人が「償却費」以外の科目名で費用化した場合であっても、その性質や金額から償却費として損金経理したものとみて差し支えないものの例示を掲げています。(出典:法人税基本通達逐条解説(十一訂版)/松尾公二(著))
そして、このうちの1つに「令第54条第1項《減価償却資産の取得価額》の規定により減価償却資産の取得価額に算入すべき付随費用の額のうち原価外処理をした金額」(同通達⑴)があるのですが、ここでいう「原価外処理」とは何を指しているのか疑問が生じるのではないかと思います。
例えば、機械装置を購入した際の据え付け費用(附属費用)については、その機械装置の取得価額に含めなければならない訳ですが、これを誤って、一般管理費で費用処理した場合と製造原価として費用処理した場合で考えてみましょう。
この場合、同通達⑴でいう「原価」が「製造原価」を指しているとするならば、「原価外処理をした」とは「製造原価に算入しなかった」という意味になるので、一般管理費として処理した場合は償却費として損金経理したものと認められ(同通達⑴に該当し)、製造原価として処理した場合は償却費として損金経理したものとは認められない(同通達⑴に該当しない)ということになります。
この点、同通達⑴の趣旨は、税法上の取得価額には、減価償却資産そのものの購入対価のほか、その購入のために要した付随費用やその資産を事業の用に供するために直接要した、いわゆる間接付随費用が含まれるところ、これらの付随費用は、企業会計上の取扱いと必ずしも一致しないことや金額も比較的少額であることなどから、その減価償却資産の取得価額に含めずに損金経理(原価外処理)した場合であっても償却費として損金経理したものとして取り扱うものと考えられています。
また、「製造原価」に算入したか否かで、償却費として損金経理したものと認められるか否かの判断が異なるという結論は合理的説明ができません。
そして、法令・通達において製造原価のことを指す場合には、「製造等の原価の額」(法令32②)や「製造原価に算入」(法基通5-1-4)のように明確に表現されています。
これらのことから、同通達⑴の「原価」とは「製造原価」を指しているのではなく、減価償却資産の「取得原価」を指しているといえます。

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