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酒税の免許は飲食店で必要?【ケース別】飲食店の酒類免許について
自動車を持っている人は自動車税を、不動産を持っている人は固定資産税を毎年支払わなければなりません。法人を経営している場合も、公益法人などの一部を除けば、原則として法人税を毎期支払わなければなりません。
では、酒税はどうでしょうか?お酒を飲んでいる私たちが酒税を納めることはありませんが、酒類を提供している飲食店はどうでしょうか?果たして酒税を納める義務があるのでしょうか?
また酒類を提供するためには何らかの許認可が必要になるのでしょうか?
本記事では、飲食店の経営に必要な酒税の基礎知識についてじっくりと解説していきます。
1.飲食店と酒税について
冒頭で述べたように、酒類を取り扱う飲食店では、所得税の確定申告のように酒税の申告や納税義務が果たしてあるのでしょうか?
酒税の納税義務者と税負担者について
酒税法では、酒税の納税義務者を以下のように定めています。
・酒類の製造者
・酒類を保税地域から引き取る者(酒類を輸入する事業者)
つまり、酒税法では、お酒を造る事業者やお酒を海外から輸入する事業者に対して納税義務を課しているわけですね。
これに対して酒税の負担については、酒税分が最終的に酒類の価格に転嫁されていることから、酒類の消費者が酒税の負担者ということになります。
ちなみに、酒税や消費税のように、納税義務者と実際の税負担者(担税者)がことなる税のことを「間接税」といい、法人税のように納税義務者と担税者が同じ税のことを「直接税」といいます。
(酒税法第6条、第6条の3、第6条の4)
(国税通則法第15条)
<参照元>国税庁『お酒についてのQ&A【総則】』
飲食店では酒類販売免許が必要な場合がある
飲食店で飲むための酒類を販売するのであれば、酒税に関する免許を取得する必要はありません。しかし、飲食店以外で飲むような酒類をテイクアウト用として販売する場合は、酒類販売免許が必要です。
たとえば、自家製の梅酒やハーブなどを染み込ませた特製のリキュール(ヴェルモットなど)をテイクアウトで販売する場合などがこれに該当します。
(酒税法第9条、第46条)
(酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の9 登録免許税法第2条)
(法令解釈通達第2編第9条関係、第46条関係、第8編第1章第86条の9関係)
<参照元>国税庁『お酒についてのQ&A【販売業免許関係】』
2.酒税の免許とは?
先程酒税の免許について軽く触れましたが、この章では飲食店で必要になるかもしれない酒税の免許やその内容についてもう少し深く掘り下げてみましょう。
酒税の販売免許は2種類
酒税の免許は、大まかに以下の2種類に分けることができます。
・酒類製造免許
・酒類販売免許
このうち、酒類の販売に必要となるのが酒類販売免許です。この酒類販売免許は、誰に何を販売するのかよってさらに以下の2つに分かれています。
・酒類卸売業免許
・酒類小売業免許
酒類卸売業免許
酒類の販売者に対して販売用の酒類を販売したり、酒類の製造者に製造用の酒類(例えば醸造用アルコールなど)を販売したりするために必要となるのが、酒類卸売業免許です。
このような酒類の卸売業務を行うためには、この免許が必要になります。ただし、飲食店で酒類を提供するだけであれば、この免許は必要ありません。
酒類小売業免許
消費者や飲食店営業者などに酒類を継続的に販売する場合に必要となるのが、酒類小売業免許です。上述のように、自家製の梅酒などをテイクアウト商品として販売するためには、この免許が必要となります。
3.飲食店で酒税の免許がいる場合・いらない場合
では最後に、飲食店で酒税の免許がいる場合といらない場合をケースごとに分けて考えてみます。酒税の免許について、間違えられることが多いのが以下のケースです。
・長年棚卸商品として残っているものをネットオークションで販売
・ビール券を販売
・商店街主催のお祭りに出店
・自家製の梅酒を商品として提供
長年棚卸商品として残っているものをネットオークションで販売
店で買いこんだウイスキーなどが、注文を受けることなく不良在庫となってしまうことがあります。また、話題になることを期待して購入したロマネ・コンティのような超高級ワインが、あまりにも高級過ぎて誰も注文されないままデットストックになってしまう場合があります。
こういった商品をネットオークションで販売するのに、果たして酒類の販売免許は必要になるのでしょうか?
答えは「YES」です。
個人が飲用目的で購入したものをネットオークションなどで売買する場合で、かつ継続的に行うのでない場合に限り、販売用の免許は必要ありません。
しかし、それ以外は、酒類の販売業免許が必要となります。
ただし、法令解釈通達第2編第9条では酒類の販売免許が必要な販売業を「酒類を継続的に販売すること」と定義しており、仮に飲食店を営む事業者が1度きりで販売する場合に免許が必要となるのかは極めて判断が難しい問題となります。
そのため、もう少し踏み込んで具体的な内容が知りたい方については、ジー・エフ税理士法人までお問合せ下さい。
ビール券を販売
飲食店がビール券を販売する場合、販売免許は必要となるでしょうか?
答えは「NO」です。
ビール券の販売は酒類の販売でなく物品(有価証券)の売買となるため、販売のための免許は不要です。
(酒税法第2条、第9条)
<参照元>国税庁『お酒についてのQ&A【販売業免許関係】』
商店街主催のお祭りに出店
飲食店を経営していると、商店街などが主催するお祭りや物産展などに出店して酒類を販売することがあります。この場合、酒類の販売免許は必要となるのでしょうか?
答えは「ケースバイケース」です。
ビールなどを紙やプラスチックのコップに注いで販売する分には店内で提供するのと変わりませんから、特に免許は必要ありません。
しかし、日本酒やビールなどの酒類を瓶や缶に入った状態で売るためには、酒類の販売業免許(この場合、「期限付酒類小売業免許」)が必要となります。
なお、期限付酒類小売業免許を取得するためには、あらかじめ酒類の販売免許もしくは製造免許を取得していることが条件となります。
ですから、これらの免許を持っていない飲食店が商店街などのお祭りで瓶に入ったビールなどを販売することはできません。
(酒税法第9条、第10条、第11条)
(法令解釈通達第2編第9条、第10条、第11条関係)
<参照元>国税庁『お酒についてのQ&A【販売業免許関係】』
自家製の梅酒を商品として提供
飲食店や旅館などで、自家製の梅酒を販売することがあります。この場合、酒類の免許は必要となるのでしょうか?
答えは「NO」です。
本来であれば焼酎に梅などを漬け込む行為は酒税法上新たな酒類を製造することに該当するため、酒類製造免許が必要となります。
しかし、飲食店や旅館などが施設内で自家製の梅酒を商品として提供する場合で一定の要件を満たす場合に限り、酒類の製造免許の必要はありません。
ただし、自家製の梅酒などをテイクアウトやお土産として販売する場合は、酒類の製造免許や販売免許などが必要となります。
(酒税法第7条、第43条第1項、第10項、第11項)
(租税特別措置法第87条の8、同法施行令第46条の8の6、同法施行規則第37条の4の7)
<参照元>国税庁『お酒についてのQ&A【自家醸造】』
4.おわりに
酒税では、酒類の製造や販売をかなり厳格に管理しており、一般的に多くの人が「これくらいは大丈夫だろう」と思うことですら酒税法違反となってしまうことは珍しくありません。
個人であれば単なる間違いで済むケースであっても、飲食店が業務として行うのであれば、問題が大きくなってしまう可能性もあり注意が必要になります。
国税OB顧問 税理士
富川 泰敬
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