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2022.03.31

連結税効果会計が必要な理由と連結財務諸表に固有の一時差異をわかりやすく解説

税務関連
個別財務諸表の作成時点で税効果会計が適切に行われていると、個別財務諸表を単純に合算して作成した連結財務諸表では利益と税金は合理的に対応しています。

しかし、連結財務諸表の作成手続きの過程で、連結財務諸表上の利益と税金が合理的に対応しなくなる場合があります。
そのときは連結税効果会計手続きが必要です。

連結税効果会計とはどういったものか、この手続きが必要な理由、および連結税効果会計手続きが必要になる場合について解説します。

1.連結税効果会計とは?

連結財務諸表においても個別財務諸表で発生する企業会計上の利益と税務会計上の課税所得が異なる場合があります。

連結税効果会計とは、個別財務諸表を作成するときに税効果会計を適用していても発生する連結財務諸表に固有の一時差異にかかわる税金を合理的に期間配分する手続きのことです。
個別財務諸表から連結財務諸表を作成するとき、個別財務諸表上と連結財務諸表上での資産・負債に相違が発生するときがあります。そのときに利益と税金の関係が合理的になるように調整するのが連結税効果会計です。

なお、連結や個別の税効果会計は企業会計上の手続きです。税金の計算には影響しないので節税効果はありません。

2.連結税効果会計が必要な理由

個別財務諸表で税効果会計処理を行っても、連結財務諸表に一時差異が発生して利益と税金が対応しなくなる主なケースとして以下があります。

これらのケースにおいては当期または翌期以降の連結上の利益に影響を与えます。

そのため繰延税金資産や繰延税金負債を計上し、連結財務諸表上で整合性が取れなくなってしまった利益と税金を合理的に対応させるために連結税効果会計手続きが必要です。

また、個別財務諸表を作成するときと同じですが、大きな金額の一時差異が生じると損益計算書の当期純利益も大きく増減します。
その結果、連結での業績を正しく、正確に把握することが投資家や株主にとって困難になります。

法人税申告書の別表を見ることが可能であれば、一時差異によるものと認識できます。しかし、企業外部の利害関係者は法人税申告書を閲覧できません。
そこで、これらの情報を積極的に公開することで投資家や株主を重視する企業姿勢・努力をアピールできます。
また、連結税効果会計の適用によって、多くは繰延税金資産が生じ、貸借対照表の資産の部に計上されることで純資産が増加します。
純資産の増加によって自己資本比率も増加するため、財務健全性が向上し、投資家や株主および金融機関へよい印象を与えられます。
その結果、株価や融資を受けるときにプラスに働くなどの効果が期待できるため、連結税効果会計は必要です。

・連結税効果会計手続きが発生する主なケース

(1)資産および負債を時価で評価し、評価差額が発生したとき

(2)未実現損益を消去したとき

(3)債権と債務の相殺・消去で貸倒引当金を減額したとき

(4)会計処理を統一した結果、連結手続きで連結損益に影響が出たとき


(1)資産および負債を時価で評価し、評価差額が発生したとき

資本連結の会計手続きで、親会社が子会社所有の棚卸資産、土地・建物、その他の資産を時価で評価すると、評価減や評価増による差異が生じます。

差異が生まれるのは子会社の個別貸借対照表上で評価替えが行われていないためです。

例えば親会社が子会社の棚卸資産を時価で評価して評価減が発生したとします。このとき子会社が翌期以降にその棚卸資産を販売すると、子会社の売上原価は連結損益計算書の金額より多くなります。
この結果、子会社の個別損益計算書の利益に対して連結損益計算書では少なく計上されるという一時差異が発生します。
そこで、棚卸資産を時価で評価したとき評価減があれば、その金額に対応する税効果額を繰延税金資産に計上します。
そして棚卸資産が販売された年度に取り崩し、その額を法人税等調整額の借方に計上します。
また子会社が所有する土地を時価で評価することで評価増が発生すれば一時差異が生じます。
その後、その土地が売却されると、子会社の利益は連結損益計算書の利益より多くなります。
この結果、子会社の個別損益計算書上の税金は、連結損益計算書の対応している税金よりも多くなります。

そのため土地の評価額が増加したときには、増加した額に見合う税効果額を繰延税金負債に計上します。その後、土地を売却したときに繰延税金負債を取り崩し、その額を法人税等調整額の貸方に計上します。

(2)未実現損益を消去したとき

未実現損益は、連結グループ内の企業で損益取引が行われたとき、その資産が連結決算日までに連結グループ内の企業に在庫として残っているときに発生します。

未実現損益は棚卸資産だけでなく土地・建物などの固定資産やその他資産にも含まれます。

この未実現利益は連結グループ企業外に販売されていないため、連結手続きで消去されます。しかし、資産を売却した企業の個別財務諸表上では、その利益に対して税金が課税されるため、一時差異が発生します。
つまり、連結財務諸表上で未実現損益が消去されているにもかかわらず、税務上は資産売却益が発生すると、その利益に対して課税されます。将来、未実現損益が実現したときには課税されません。
そのため未実現利益を消去したときは税金を繰延税金資産として計上し、利益の実現に対応させて取り崩します。
なお、連結税効果会計では未実現損益があるときには全額を消去しなければなりません。
ただし、販売する企業で回収が不可能と認められる未実現損失は原則として消去の必要はありません。

税効果会計の方法として、税効果会計基準は「資産負債法」を採用していますが、未実現損益の消去による会計処理に関しては、例外として「繰延法」を採用しています。

(3)債権と債務の相殺・消去で貸倒引当金を減額したとき

連結グループ企業間の債権・債務は連結手続きで相殺・消去されます。

このとき相殺・消去された債権に対応する貸倒引当金が消滅するため、貸倒引当金繰入額勘定を減額します。
この減額によって連結貸借対照表上の貸倒引当金は、個別財務諸表より少なくなって一時差異が生まれます。
その差異を解消するために連結税効果会計手続きが必要です。貸倒引当金が損金として認められるときは、繰延税金負債を計上しなければなりません。

税務上の損金として認められないときは、減額の修正で個別財務諸表の一時差異は消滅するため、個別貸借対照表上の繰延税金資産を取り崩します。

(4)会計処理を統一した結果、連結手続きで連結損益に影響が出たとき

連結グループ企業内で会計処理が統一されていないとき、一般的には親会社の会計処理方針に統一して連結手続きが行われます。

例えば棚卸資産や有価証券などの評価方法が親会社と子会社で異なるとき、連結手続きで会計処理を統一することで差異が発生すると、その分だけ連結損益が増減します。
一方、個別財務諸表上の税金はそのままの金額で合算されるため、損益と税金が対応しなくなり、連結税効果会計での修正が必要です。

3.まとめ

連結税効果会計は、連結グループ企業全体として会計上の利益と税金を合理的に対応させるために税金を適切に期間配分する会計手続きです。

投資家や株主に与えるメリットだけではなく、自己資本比率などの分析に必要な指標が改善するため、銀行融資が受けやすくなるなどのメリットも得られます。
また、連結納税を導入すれば、連結グループ内企業に損失が出れば、利益が出た企業との損益通算が可能です。
連結税効果会計手続きは、どの税率を使うか、一時差異に該当しても繰延税金負債または繰延税金資産に計上しないときもあるなど処理に迷ったり、処理が難しかったりします。
そのため、連結納税の導入においてはメリットについて総合的な判断が必要です。

正しい会計処理や判断ができるように税務の専門家に相談することをおすすめいたします。

ここまで記事をお読みいただきありがとうございます。

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