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2021.07.24

突然税務調査の連絡が!事前準備で何を対策すべきか?

税務調査

1.税務調査は年間約30%の割合で重加算税を徴収している

国税庁は毎年「法人税等の調査事績の概要」という報道発表資料を公表しています。

令和2年11月に公表された令和元事務年度の資料を読み解くと、以下のような見出しの下に、メリハリを利かせた税務調査を行おうとしていることがわかります。

❶ 悪質な納税者には厳正な調査を実施する一方で、その他の納税者には簡易な接触も実施。
❷ 国税庁では、データベースに蓄積された申告事績や法定調書のほか、税務職員が独自に収集した資料情報等から分析・検討を行い、不正に税金の負担を逃れようとする悪質な納税者等を的確に抽出するとともに、適切な調査体制を編成し、厳正な調査を実施し。
❸ 納税者の税務コンプライアンス維持・向上に向けた取組。

国税庁は、他の国家公務員と同様に定員が少しずつ減少していますが、人的資源が限られる中で、最近のトピックスである

❶ 消費税還付申告法人
❷ 海外取引法人
❸ 無申告法人

などの調査に対して積極的に取り組むことが求められており、自ずと、これまでの「数年に1回」というローテーションのような税務調査については実施の見直しが避けられないようになっています。

そこで、本格的な税務調査ではなく「簡易な接触」として、その法人特有のトピックスに絞った調査を行ったり、内部管理体制がしっかりしている法人については、現場の確認件数を少なくしたり、調査時期の間隔を伸長するといった「リスクアプローチ」の考え方を導入しようとしています。

そういったメリハリを利かせた税務調査によって、令和元事務年度(令和元年7月から令和2年6月)については、法人税については76,000件の税務調査を実施し、うち57,000件について誤りを指摘し、そのうち16,000件(率にして28%)については不正計算、すなわち重加算税の賦課決定を行っています。

令和元事務年度は新型コロナウイルス感染症の影響により調査件数が前事務年度よりも20%強減少していますが、この重加算税の賦課決定割合は前事務年度とあまり変わっていません。

重加算税は、通常の申告漏れである過少申告加算税(10%)・無申告加算税(15%)に代えて、高率(35%・40%)で課税されるものであり、納税者の資金的な負担が大きいことに加え、「この法人は過去に悪質な所得隠しをしたことがある」という履歴が税務署内に記録されることもあって、その後の税務調査の厳格さにも少なからず影響を与えることになるため、納税者としては重加算税の認定は是非とも回避したいところです。

2.税務調査は事前準備で対策可能

「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」とは、春秋時代の「孫子の兵法」に登場する言葉であり、敵と味方の情勢をしっかり把握していれば、百回戦っても敗れることはないという意味ですが、これは税務調査においても当てはまります。

まず、「敵を知り」については、「敵」の情勢を可能な限り正確に見積もることが肝要となりますが、税務調査においては、以下のような事柄を実地調査の前に把握しておくことが望まれます。

❶ どのような経歴の調査官が臨場するのか。

どのような経歴の調査官が臨場するのかは、今回の調査の税務署が想定している「テーマ」の絞り込みに少なからず影響します。

例えば、その調査官が長らく海外取引関係の調査を専属で担当する国税局の部門に配属されており、今回の調査対象年度において自社が海外取引を活発にするようになってきたような経営環境があれば、今回の調査のテーマの一つに「海外取引」が含まれている可能性が高くなるでしょう。

また、事務年度の終わり頃(例えば5月・6月頃)に、ベテランの調査官がいかにも新任の事務官を帯同させて来るといった場合には、自社の申告内容にリスクを識別したのではなく、税務署内部のOJTとしての意味合いが含まれている可能性があります。

調査官を「敵」とみなして対決姿勢を取ってしまうと調査の進行に悪影響を及ぼす可能性があるため得策ではありませんが、少なくとも、税務調査の直接の相手である調査官のこれまでの経験や経歴といった属性に関する情報は、入手しておくに越したことはないでしょう。

❷ どのような論点を調査しに来たいのか。

次に、「己を知れば」については、調査対象年度において、税務リスク(過少申告リスク)を引き起こすような取引がなかったかどうかを洗い直す必要があります。

例えば、関係会社を有しているだけでも、給与の負担金、寄附金といった古典的な論点から、それが外国法人であれば国外関連者取引、移転価格税制といった論点にも波及する可能性があります。

また、在庫を保有する企業であっても、その在庫が季節性商品の場合には評価の論点が、高額な商品であれば仕入れ・売上の期間帰属の問題が惹起されます。

このように、自社の調査対象年度の取引内容について、今回の税務調査において過少申告を指摘される可能性があるのか否かを事前に検証しておく必要があり、それをしておかなければ、突然指摘を受けた際に冷静に抗弁できなくなってしまいます。

3.事前準備で確認すべきポイント

上記2.❷に絞って説明しますと、まずは、税務調査時に提出を求められる可能性のある会計資料(データを含みます)の整理をしておくことが必要です。

例えば、売上取引であれば、その売上の基になる見積書控から入金データまでの一連の取引データが揃っているか(トレースできるか)、給与については、個々の従業員における勤務時間データの根拠資料(タイムカード)から給与の支払処理、そして、年末調整関係資料までトレースできるかを確かめてみましょう。

また、当日の臨場調査においては、まずは、調査対象年度から現在に至る業界の概況や自社の状況について概括的にヒアリングされ、そのヒアリング内容と個別具体的な取引資料との矛盾を指摘されることがありますので、経営状況のヒアリングにおいては、過去に申告書を提出した財務内容との整合性を意識して臨むことが理想的です。

調査官からの資料の提示に対して、あまりに時間を浪費していると、調査非協力の心証を抱かれるとともに、消費税の仕入税額控除の否認といったペナルティも考えられなくはないため、適時に資料が提出できるような態勢を整えることが大事です。

4.調査当日の流れと注意点

国税局管轄の大規模な法人でない限り、通常の中小企業に対する税務調査であれば2人程度が3日程度臨場するケースが多く、進行状況によっては1日程度早く終了するといったことも珍しくありません。

臨場していきなり帳簿や領収書といった原始証ひょうを確認することは少なく、まずはベテランの調査官がヒアリングを行い、調査官が臨場調査の前に税務署内で収集した資料に基づく「過少申告の仮説」の当否を頭の中で検証しながら、解決しない論点について、重点的に初日の午後から資料を確認するといった流れが一般的かもしれません。

そして、臨場調査を終えると、収集した資料を税務署内で検討する中で追加資料の提出を求められることがありますが、特段新たな論点が発生しなければ、税務調査の終結の手続きとして、修正申告が必要と考えられる事項の有無とその内容の提示が行われます。

納税者が承服すれば修正申告書を提出して増加した税額を納付して終結しますし、納税者が納得しなければ、税務調査が続行され、最終的に妥結しなければ「更正処分」「決定処分」といった強制的に課税関係を発生させる不利益処分を受けて終結することになります。

5.税務調査は対策すれば心配無用!悩んだら税理士に相談すべき

上記で見たように、税務調査は「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」といえますが、税務調査の対応に慣れている納税者はほとんどいないのが実情であり、納税者が誰のサポートを受けずに百戦錬磨の調査官と対等に渡り合えることは、現実問題としてはかなり厳しいものがあります。

こういった納税者の不安をカバーするのが、税務調査に立ち会うことが税理士法で認められた税理士です。

税理士に税務調査の立会を依頼することによって、
  • 納税者のプレッシャーを最低限度に抑制する。
  • 納税者の言いたいことを税法の言葉に翻訳して調査官に伝えてくれる。

  • のみならず、

  • 納税者と調査官の知識・経験の差をカバーして納税者に不利にならない結論を導く。
上記に寄与することになりますので、税務調査の対象となっている税目それぞれに経験豊富な税理士に関与を依頼することをお勧めします。

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