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2021.08.26

税務調査の期間➀ 税務調査は何年分が対象?問題があった場合のペナルティは?

税務調査

1.税務調査の対象期間は基本的に3年

⑴ 個人事業者・中小企業の最大の利害関係者は税務署

個人事業者・中小企業にとって、金融機関(銀行・信用金庫・日本政策金融公庫など)と並んで経理関係についての最大の利害関係者は税務署といって良いでしょう。

特に税務署は、税務調査官に認められた職権によって「税務調査」が行われ、納税者はそれを受け入れる事実上の義務が課せられているため、無下に拒否したり先送りすることは許されません。

そして、税務調査によって過少申告が指摘されれば、所得税や法人税の追加税額の発生のみならず、「過少申告(無申告)加算税」や「延滞税」、悪質な所得隠しと認定されれば「重加算税」の賦課の可能性もあります。

⑵ 事業年度

個人事業者・中小企業の決算は原則として年1回行わなければなりません。
個人事業者は、所得税法において「暦年」、すなわち、1月1日から12月31日までを計算期間とすることが法定されており、だからこそ、確定申告期間が2月16日から3月15日までと一律に定められています。
一方、法人は、いつを事業年度末にしても構わず、極端には4月2日から4月1日までの1年間とすることも可能です。

⑶ 税務調査の対象期間

税務署は毎事業年度ごとに税務調査に臨場するのではなく、1回に数年度分をまとめて調査対象期間に指定して通知することが通常です。

そして、その期間は、後述するイレギュラーなことがない限り3年度分であることが通常です。

しかし、国税通則法は、課税標準申告書(確定申告書)が提出された申告に係る税務調査においては、税務署長は、法定申告期限から5年を経過した日以後においてはすることができないと規定されており、これによると5年度分を調査対象としても良いようにも思えます。

実は、この「5年」は、平成23年の国税通則法の改正前は「3年」であり、職権としては5年度分を調査対象とすることができるようになりましたが、調査官の調査に割くことができる人的リソースの兼ね合いもあって、高額・悪質な所得隠しがないことを前提に、改正前の3年度分を対象としているケースが多いようです。

2.税務調査で問題が発覚した場合は対象期間が延びる場合も!

上記で見たように、高額・悪質な所得隠しがないような一般的な過少申告しか想定されない場合には、3年度分を対象として調査の予告がなされることが通常です。

中には、3年度分の資料は用意させたものの、直近1年度分の資料を重点的に確認して特段問題がないとの心証を得れば、3年度分の全ての資料を確認せず終了するといったこともあるようです。

しかし、実際の調査において、過去3年度分を遡って同様の過少申告内容が識別されるといった事象が発生すれば、現在の法令どおり、追加で(4~)5年度分まで指定されるケースもあります。

更に、その過少申告内容が悪質な所得隠し、すなわち「偽りその他不正の行為」が識別された場合には、税務署は、法令上7年度分に遡って税額を増額改定できる権限があり、調査対象期間も最高7年まで伸長することになります。

このように考えると、税務調査の対象期間は、最低期間の3年から最長期間の7年まで幅のあるものであり、それは、自社の申告内容を税務署がどのように評価しているかに依拠していることがわかります。

3.税務調査で問題が発覚した際のリスクは?

税務調査において、問題、すなわち過少申告が明らかとなった場合には、どのようなペナルティが待ち構えているのでしょうか。

法人税・所得税の「本税」
過少申告によって、本来納付すべきであった所得税(個人事業者)・法人税(法人)が結果的に少なかったということになりますので、差額の税金(本税)を納めなければならないのは言うまでもありません。

法人に課される法人税は原則として税率は一定ですので、所得(利益)の過少申告があった場合でも当初の申告と同じ税率で本税が増えることになりますが、個人事業者に課される所得税は「累進税率」といって、所得が増えるほど適用される税率が高くなる(5%から45%まであり、この他に一律に10%の住民税が加算される)ことから、本税が思わぬ規模になることがあります。

過少申告加算税
税務調査において指摘された本税を当初から申告納付していればよかったのですが、そうではなく税務調査を機に結果的に過少申告になったのですから、そのペナルティとして課されるのが過少申告加算税です。

過少申告加算税は、新たに納めることになった本税の10%相当額が課されますが、新たに納めることになった本税が、「当初の申告納税額と50万円とのいずれか大きい金額」を超えている場合には、その超えている部分については加重されて15%が課されることになります。

なお、税務調査ではなく、事前に自主的に過少申告に気が付いて修正申告をすれば、過少申告加算税は課されません。

無申告加算税
上記の⑵は、過去に申告書を提出している場合であり、もともと申告書すら提出していない(無申告である)場合には、過少申告加算税よりも加重な無申告加算税が課されます。

考え方としては、⑵の過少申告加算税に「+5%」加重されると理解しておけば良く、この点からも、申告義務があるのに無申告を決め込むことのリスクが高いことが窺えます。

重加算税
過少申告による本税の増加が、単純な法令の適用誤りや誤処理によるものではなく、納税者による「隠ぺい又は仮装」といういわゆる所得隠しによるものであったと認定された場合には、過少申告(無申告)加算税に代えて、重加算税というペナルティが課されます。

税率は、過少申告の場合(過去に申告書を提出している場合)には35%、無申告の場合には40%が課されます。

延滞税
延滞税は、本来納付すべき日までに本税が納付されなかったことを要件として課される遅延利息としての性格があります。

しかし、単に利息という側面のみならず、罰金としての側面も併せ持つために、現行の延滞税はその両者の側面を折衷した計算方法となっています。

❶ 法定納期限の翌日から2か月を経過する日まで
「年7.3%」と「特例基準割合(※)+1%」のいずれか低い割合(令和3年分は年2.5%)

❷ 納期限の翌日から2か月を経過した日の翌日以後
「年14.6%」と「特例基準割合(注)+7.3%」のいずれか低い割合(令和3年分は年8.8%)

(※)各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合を言います。

4.税務調査は事前準備で対応可能!不安なら税理士に相談すべき

上記3.は、主に金銭的な側面からペナルティをご説明しましたが、忘れてはならないペナルティがあります。

それは、過去の税務調査において過少申告が識別されたという事績が税務署内に記録されることによって、将来に予定されるはずの税務調査における悪影響を覚悟しなければなりません。

想定されるペナルティとしては、以下のものが想定されます。

❶ 調査の頻度が増す
今回の税務調査において特段問題がなければ、次回は「5年後」であったかもしれないところが、やはり「3年後」になるといった、調査の頻度が相対的に増すというペナルティが考えられます。

❷ シビアな調査になる
今回の税務調査において特に重加算税が課された場合には、「次回もこの納税者は所得隠しをするかもしれない」という懐疑心の下に、より重厚な体制(例えば、税務署の一般的課税部門ではなく悪質な調査を専門的に担当する特別調査官が直接対応するなど)でシビアな調査を行うというペナルティが考えられます。

いずれにせよ、税務調査が来ても安心して構えられるような事前準備を普段から行っているに越したことはありません。

しかし、税務調査で要求される会計資料は、日常的に経理業務に専従している者であれば馴染みがあっても、それ専門に人的資源を割くことができない中小企業において、調査官の欲する会計資料を瞬時に想起するのは難しいかもしれません。

また、税務調査は既に提出した税務申告内容の確からしさを事後的に検証するために実施されるものですので、表面的に税務申告と整合性のある資料を取り揃えていても調査官の意図に応えることはできません。

そうはいっても、日常的に経理業務に専従できないような人的資源の限られる中小企業において、調査官の欲する証拠資料はどれなのか、またその証拠資料の要求レベルを瞬時に想起することが難しいのもまた事実ではないでしょうか。

このような場合に、税務調査の経験が豊富で、かつ、自社の業態に精通している税理士の存在は、調査官及び納税者である事業者の調査時のストレスを低減させ、早期かつ穏便な税務調査の終結に導くことが期待されます。

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