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個人の青色申告と白色申告。税務調査が来やすいのはズバリどちら?
個人事業者やフリーランスの方の確定申告には2つの種類があります。一つが青色申告で、もう一つが白色申告です。
この2つは多くの点で違いますが、税務調査についてはどうでしょうか?
税務調査が来やすい方と来にくい方があるのでしょうか?
また、来た時のリスクはどちらの方が高いのでしょうか?
本記事では、青色申告と白色申告の基本的事項を踏まえた上で、両者の違いやメリット・デメリットを説明し、税務調査の対応策などについて解説していきます。
1.青色申告とは
青色申告とは、複式簿記(一部簡易簿記も可)で帳簿を記帳し、それに基づいて貸借対照表と損益計算書を作成する申告方法のことをいいます。
複式簿記と単式簿記の違い
80円で仕入れたものを100円で売った場合を考えてみましょう。
「20円儲かった!」とだけ記帳するのが単式簿記で、「20円儲かった。そして現金が手元に20円残った」と記帳するのが複式簿記です。
単式簿記では損益計算書しか作成できませんが、複式簿記で記帳すると損益計算書と貸借対照表が作成できます。
青色申告の承認について
青色申告を行うためには、申告をしようとする年の3月15日(もしくは事業開始の日から2ヶ月以内)までに税務署に届出書を提出し、税務署長の承認を受けなければなりません。
ちなみに、「青色申告」という名前は申告書が青色だったことに由来していますが、平成13年からは申告書が青色ではなくなっています(ただし法人を除く)。
青色申告ができる人
所得税法では、所得を10種類に分類しています。その中でも青色申告ができるのは、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」の3つだけです。
たとえば、ビットコインなどの暗号資産の売買による収益は基本的に雑所得にあたるため、青色申告はできません。
2.白色申告とは
白色申告とは、単式簿記のような簡易的な方法で記帳をし、それに基づいて収支内訳書(損益計算書とほぼ同じものです)を作成する申告方法のことをいいます。
なお、白色申告を選択する場合は、青色申告とは違って税務署長に承認などを得る必要はありません。
3.青色申告と税務調査
青色申告と白色申告に関する簡単な説明が終わったところで、それぞれの特徴やメリット、税務調査との関係などについて解説します。
まずは青色申告からです。
青色申告のメリット
青色申告で申告を行うと、おもに以下のようなメリットを受けることができます。
・最大65万円の青色申告特別控除が受けられる
・損失が出た場合は3年間繰り越せる
・家族に支払った給料が経費にできる
・少額減価償却資産を全額償却できる
最大65万円の青色申告特別控除が受けられる
青色申告で申告を行うと、最大で65万円の青色申告特別控除が受けられます。たとえば、年間の利益が100万円だった場合、白色申告であれば所得金額は100万円のままです。
しかし青色申告であれば特別控除が受けられるため、所得金額を100万円-65万円=35万円にまで圧縮することができます。
したがって、白色申告と比べると、大幅に節税をすることができます。
損失が出た場合は3年間繰り越せる
事業をしていると、赤字になってしまうこともあります。しかし、青色申告であれば、翌期以降3年間はその赤字を繰り越して所得控除することができます。
つまり、赤字分だけ翌期以降の所得が減らせるので、節税ができるわけですね。
しかし、白色申告にはこれができません。ですから、前年がどれだけ赤字でも、翌年黒字であれば納税しなければなりません。
家族に支払った給料が経費にできる
青色申告を選択した場合は、事前に届出を出しておくと、生計を一にする家族に対して支払った給料を経費にすることができます。
ですから、一生懸命働いてもらった分だけ、家族に給料を支払うことができます。
しかし白色申告の場合は、どれだけ身を粉にして働いてもらったとしても、給料として経費にできるのは最大で86万円までです。
少額減価償却資産を全額償却できる
1つあたり10万円を超えるパソコンや機械などを購入した場合は、全額を一気に経費にするのではなく、所得税法で定められた年数で毎年分割して経費に算入しなければなりません。
しかし、青色申告であれば、1つあたり30万円未満(ただし合計300万円まで)であれば、一括で全額経費に算入することが認められています。
ですから、決算前に黒字が出ていた場合などに、必要なパソコンなどを購入して節税対策をすることができます。
しかし、白色申告ではこのようなことができません。
青色申告のデメリット
青色申告のデメリットは、複式簿記で帳簿を作成しなければならない点です。
ただし、会計ソフトを使って入力をすれば簿記の知識がなくても自動的に複式簿記で帳簿類を作成してくれますし、それが難しいようであれば会計事務所などへ依頼すれば帳簿類の作成からお願いする事ができます。
したがって、正直なところデメリットらしいデメリットはほとんど見当たりません。
青色申告で税務調査を受けた場合
青色申告で申告するためには、上述のようにある程度以上の会計に対する知識が必要となります。
ということは、ある程度以上の会計知識がある人物が作成した申告書類になるわけですから、故意の脱税などでない限りは税務調査時にそれ程大きなダメージを受けることは考えにくいと言えます。
4.白色申告と税務調査
次は、白色申告についてです。
白色申告のメリット
白色申告のメリットは、会計知識などがそれ程なくても簡単に申告が済ませられる点です。
白色申告のデメリット
白色申告のデメリットは、青色申告と比べるとあらゆる点で節税が難しい所です。
たとえば、同じ売上・同じ利益だったとしても、青色申告と白色申告とでは納税金額に天と地ほどの差が出ます。この点が白色申告のデメリットです。
白色申告で税務調査を受けた場合
青色申告と比べると白色申告は、会計知識がほとんどなくても申告書を作成することができます。
逆に言えば、知識がないから白色申告を選択しているわけですから、その分「申告ミスが多いはず」と税務署に先入観を持たれていてもおかしくありません。
ですから、青色申告と比べてどちらが税務調査に来やすいかと言われたら、圧倒的に白色申告でしょう。
ただし、白色申告を選択している事業者の方が青色申告よりも圧倒的に多いため、税務調査の数は多くとも全体の比率は少ないと言えます。
5.青色申告と白色申告。メリットがあるのはどっち?
では、これまでのお話をもとに、青色申告と白色申告のどちらにすべきかを解説します。
リスクが高すぎる白色申告
税務調査時に、売り上げや経費などの資料が紛失している結果、税務署が正確に全体像を把握できないことがあります。
このような条件下で、同業他社の利益率などから売り上げや経費を推計し、それに基づいて課税する方法を「推計課税」と言います。
白色申告の場合は、この推計課税を受けるリスクがあります。
たとえば「赤字でまったく儲かっていないから書類も紛失してしまった」という場合などは、税務署が勝手に計算した税額を問答無用で受け入れなければなりません。
いっぽう、青色申告には推計課税が適用されないため、このような心配はありません。つまり、白色申告の方が税務調査時のリスクが格段に高いのです。
したがって、特別な事情などがない限りは、白色申告でなく青色申告を選択すべきでしょう。
白色申告をあえて勧めるなら超零細事業者のみ
白色申告をあえて勧めるとすれば、以下のような個人事業主やフリーランスなどです。
1.売上も利益も少なく、納税額も0円である
2.消費税の課税事業者ではない
3.家族に仕事を手伝ってもらっていない
4.従業員も雇っていない
これらの条件をすべて満たすような超零細事業者であれば、取引そのものが少ないため、白色申告でも特に問題はないでしょう。
ただし、税務調査で推計課税を受けないように、書類はすべて保管しておかなければなりません。
6.わからない部分は思い切って専門家に任せてしまおう
「青色申告が良いのは分かったけど、やり方が分からないし面倒くさい」と思われる方は、思い切って税理士などの専門家に任せてしまうことをお勧めします。
どんな仕事でも、忙しければ外注業者に発注することがありますよね?それと同じです。
わかる部分は自分でやるのが大原則
いきなり全部を任せてしまうのが心配な方は、とりあえずできる部分だけは自分でやるようにしましょう。
申告書が作れないのであれば申告書を作る作業だけを専門家に依頼するようにしましょう。
帳簿も申告書類も作れないのであれば、せめて領収証の整理はしておきましょう。
こうすることで、自分がやっている事業の実態が把握しやすくなりますし、依頼する費用を節約できることもあります。
事業が軌道に乗ったらすべて任せた方が圧倒的にお値打ち
やがて事業が軌道に乗ったら、すべてを会計事務所に任せてしまった方がお値打ちです。
専門家ですからミスもないですし、節税プランの提案なども受けられます。
会計事務所に支払う報酬は増えますが、節税で受けたメリットを差し引きすると、そちらの方が圧倒的にお値打ちになるはずです。
7.終わりに
個人事業主やフリーランスの確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。
白色申告は手軽にできるメリットがありますが、その分節税が難しく、税務調査時に受けるダメージの大きさも計り知れません。
税理士などの専門家を上手に活用しながら、できるだけ青色申告を行うようにしましょう。
国税OBパートナー税理士・米国公認会計士
會田 敏哉
国税局において、上場企業をはじめとする大規模法人の調査審理や、製造・サービス・国際取引など広範囲にわたる業種の税務調査事務、とりわけITの専門的技術を駆使した税務調査事務に長年従事。 都内税理士法人において、上場企業をはじめグループ法人、小規模企業などの税務会計顧問業務や、メガバンクが提供する税務相談サービス業務に従事。
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