コラム

【失敗から学ぶ】不動産投資の節税で大失敗!トラブルはこうして起きた

2022.10.20
  • 節税対策
目次

この記事の監修者

林 浩二

国税OBパートナー税理士

【失敗から学ぶ】不動産投資の節税で大失敗!トラブルはこうして起きた

不動産投資による節税の話は書籍や雑誌・セミナーなどでよく耳にしますが、その裏には、人知れずトラブルで泣いている人がいるのも事実です。 不動産投資による節税を成功させるためは、これらの失敗から学べることがたくさんあるはずです。 そこで本記事では、不動産投資の節税を狙ってトラブルを起こしてしまった事例を紹介し、失敗の原因とそれを避けるための方法などについて解説します。  

1.不動産投資に関する節税の失敗例

不動産投資で節税をしようと思ったにも関わらず、失敗してしまうケースも少なからずあります。それらの失敗例のうち、頻出しているパターンが以下の3つです。 ・不動産所得が赤字となり金利の一部が経費にならなかった ・耐用年数の計算ミスで減価償却費が思った程計上できなかった ・節税をやり過ぎてキャッシュがなくなってしまった    

不動産所得が赤字となり金利の一部が経費にならなかった

不動産所得が赤字となっても他の所得と損益通算できるため、所得の合計を減らすことが出来ます。 その結果、所得税の還付などが受けられる点が不動産投資の大きなメリットの一つなのですが、ここで気を付けなければならないのが土地の取得に関する借入金の利息です。 土地の取得に関する借入金の利息は、通常であればもちろん不動産投資の経費に出来るのですが、不動産所得が赤字となると話は別です。 不動産所得の赤字分だけは土地の取得に関する借入金の利息が損益通算の対象から外されるため、所得税の還付などが受けられなくなってしまうのです。下の2つの設例をご覧ください 【例1】 不動産所得がマイナス50万円、土地の取得に関する借入金の利息が60万円だった場合 不動産所得の赤字になると、赤字分から土地の借入金の利息を控除した金額が損益通算の対象になります。したがって、以下のようになります。 損益通算の対象=-50万円+50万円(60万円の支払利息のうち不動産所得のマイナス相当分)=0 【例2】 不動産所得がマイナス50万円、土地の取得に関する借入金の利息が40万円だった場合 損益通算の対象=-50万円+40万円=-10万円 どちらのケースも、当初予定していた金額とはずいぶん変わってしまいますね。そのため、予定していた節税効果が大幅に薄れてしまいます。  

耐用年数の計算ミスで減価償却費が思った程計上できなかった

建物の耐用年数は、たとえば新築の場合以下のように定められています。 ・木造22年 ・軽量鉄骨造27年 ・鉄骨造34年 ・RC造47年 しかし、中古物件の場合は、以下の算式によって正しい耐用年数を算出しなければなりません。 ・耐用年数の一部が経過した資産・・・(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20% ・耐用年数の全部が経過した資産・・・法定耐用年数×20%  

<参照> 国税庁作成『No.5404 中古資産の耐用年数』 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm

これを知らずに(もしくは計算をミスして)新築と同じ耐用年数で計算してしまうと、減価償却費が本来計上すべき金額より少なくなってしまいます。 その結果、納税額が増えてしまったり、あるいは還付額が減ってしまったりすることになります。  

節税をやり過ぎてキャッシュがなくなってしまった

不動産投資だけに限りませんが、節税をやり過ぎると会計上黒字でありながらキャッシュフローが悪化し、手元のキャッシュがなくなってしまうことがあります。これは、いわゆる「黒字倒産」と同じ状態です。 確かに「節税」という点だけで見れば、この状態は「成功」と言えなくもありませんが、キャッシュフローの悪化は経営を不安定にするため、やはり良いとは言えません。 不動産投資の目的は、「節税」ではなく、効率よく安定的に資産を構築していくことにあります。したがって、節税額とキャッシュフローのバランスを常に考慮に入れ、「ほどほどの節税」を目指すようにしましょう。  

2.不動産投資の節税に関する注意点

不動産投資による節税は、「投資として成功すること」に加え「節税に成功すること」の両方を達成しなければなりません。 どちらか一方だけでも難易度が高いのですが、その両方を同時に成功させるためには、投資を始めるにあたっていくつか注意すべき点があります。その中でも特に重要なものが、以下の4点です。 ・節税目的オンリーは避けるべき ・相続トラブルが生じることもある ・税務申告は必ず行う ・節税のシミュレーションは専門家を交えて適宜行う    

節税目的オンリーは避けるべき

不動産投資を行うと、状況によっては、物件からの収益をあげながら節税によって還付金を受け取ることが出来るケースがあります。このような状況は投資家として非常に望ましいことなのですが、注意しなければならない点があります。 一般的に、不動産投資による節税の多くは、減価償却費を短期間で計上することによって節税効果を生んでいます。したがって、償却が終われば計上できる経費が少なくなり、この状態が反転してしまいます。 したがって、不動産投資においては投資を主目的とし、節税はその補助的なものとして考えておいた方が良いでしょう。  

相続トラブルが生じることもある

財産の一部を投資用不動産にしておくと、相続税の節税に絶大な効果を発揮することができます。ただし、不動産は現金などと違い、簡単に相続人で頭割りすることが出来ません。 そのため、相続発生時には遺産の分割を巡りトラブルが生じることがあります。  

税務申告は必ず行う

不動産投資で節税を行うためには、収益がどれだけ少額であったとしても、必ず税務申告をしておかなければなりません。 税務調査でのペナルティを避けるためであることはもちろんですが、節税効果そのものが消滅してしまう恐れがあるからです。 不動産投資の対象となる土地の相続税評価額を下げるためには、その土地を誰かに貸していることを証明しなければなりません。 しかし、申告をしていなければそれが出来ないため、相続税の節税が出来なくなってしまう可能性があります。 ですから、金額の多寡に関係なく、毎年の税務申告は必ず行わなければなりません。  

節税のシミュレーションは専門家を交えて適宜行う

上述のように、不動産投資における節税の最も大切なポイントは、減価償却費です。この減価償却費を使い切ってしまったら、(不動産所得の)節税効果の大半を失うことになります。 ですから、「減価償却費をあとどれくらい使えるのか」「建物の帳簿価格は今いくらなのか」「減価償却終了後に売却したらいくらになるのか?」などについては常にチェックしておかなければなりません。 また、税法は毎年変わります。5年前に立てた節税プランニングが5年後にはまったく使えないものになっていることも決して珍しくありません。 したがって、収益や物件の状況、毎年変わる税法などを踏まえた上で、税理士などの専門家を交えて所得税や相続税の節税のシミュレーションが適宜行える状況を作っておくようにしましょう。  

3.終わりに

不動産投資に関する書籍や記事は、街中だけでなくネット上にもあふれています。では、それを参考にして不動産投資を行った人が全員上手く行っているか言うと、残念ながらそうではありません。 失敗の理由はさまざまですが、最も大きな理由の一つは、それらの書籍や記事などと実際のケースではそもそも前提条件が違っているからです。 不動産投資の節税スキームを紹介する場合、理想的で理論上最高に近い状態でプランニングが行われています。 しかし、実際の投資物件は一つ一つことなり、また立地条件や状況もそれぞれ違います。ですから、書籍やセミナーなどで紹介されていた方法をそのまま用いても、残念ながらその通りの結果になることはほとんどありません。 これは、節税のスキームに問題があるのではなく、節税のスキームを現状に合わせて修正することが出来ていないために生じるトラブルです。 このようなトラブルを避け、不動産投資による節税効果を最大限享受するためには、どうしても専門家による最終的なチューニングが必要になります。 ジー・エフ税理士法人では不動産投資に関するトラブルを避け、法律を厳守した適正な節税を行うため一人一人の状況や物件内容に合わせたオーダーメイドのご提案を行っております。 不動産投資や不動産の相続に関して不安がある方や事前にトラブルを避けたい方はお気軽にご連絡ください。

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