コラム
少額なら大丈夫?仮想通貨の税務調査はいくらから?
- 税務調査

ネットで検索してみると、「仮想通貨の取引で得た所得が少額だったら税務調査は来ないから大丈夫」という内容の文章をあちこちで見かけます。 果たして、これは本当なのでしょうか?また、百歩譲って本当だったとして、「少額」とはいったいどれくらいの金額を指すのでしょうか? そこで本記事では、ネットでよく見かける都市伝説のようなこの噂について、その真偽を検証し、対応策について考えてみたいと思います。
1.仮想通貨と税金の仕組み
税務調査の話をする前に、まず、仮想通貨と税金の仕組みについて整理しておきましょう。
仮想通貨と所得税の区分について
世の中には、法人税や消費税、自動車税や固定資産税などさまざまな種類の税金があります。その中でも、仮想通貨の取引で得た所得に対して課税するのは所得税です。 なお、所得税は、所得の性格に応じて所得を以下の10種類に分類しています。 ・利子所得 ・配当所得 ・不動産所得 ・事業所得 ・給与所得 ・退職所得 ・山林所得 ・譲渡所得 ・一時所得 ・雑所得 ちなみに、仮想通貨の取引で得た所得は、この10種類の中の雑所得に該当します。
収入と所得の違い
仮想通貨の取引に課税される所得は、以下の算式により計算します。 ・仮想通貨の所得=収入-諸経費 たとえば、仮想通貨の取引で得られた収入が20万円、そのための諸費用(手数料その他)が1万円のであれば、仮想通貨の所得は20万円-1万円=19万円となります。
仮想通貨の所得を申告しなくても良い人
仮想通貨の取引で所得を得た人のすべてが申告する必要があるわけではありません。 国税庁のホームページには、『上記の所得(仮想通貨の売却など)を含め年末調整を受けた給与所得以外の所得が20万円以下の方は、確定申告は不要です。』と書かれています。
<参照元> 国税庁『副収入などがある方の確定申告』 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/kakutei/fukugyo.htm
国税庁の資料の内容より、 ・会社員として給与所得を得ていること ・年末まで会社に在籍し、年末調整を受けていること(年の途中で退職した場合は不可) ・給与所得以外の所得(雑所得や不動産所得など)の合計が20万円以下であること この3つをすべて満たしている場合は、仮想通貨で得られた所得の申告や納税の必要がありません。
仮想通貨の所得を申告しなければならない人
仮想通貨の所得を申告しなければならない人は、上述の「申告しなくても良い人」以外のすべての人ですが、とりわけ以下のような場合は注意しなければなりません。 ・会社員だったが年の途中で退職した場合 ・個人事業主の場合 ・他の所得(たとえば不動産所得など)だけで20万円以上ある場合 上記の場合はすべて仮想通貨の申告をしなければなりません。
仮想通貨と税率について
所得税の計算には、他の所得と合算して税額を計算するものと、他の所得と合算しないで税額を計算するものがあります。前者を総合課税、後者を分離課税といいます。 分離課税は、不動産売却による所得や銀行預金の利子所得、退職所得や株の売却による所得などが該当するため、仮想通貨の所得である雑所得は総合課税によって税額を算出します。 下図をご覧ください。
所得税の速算表 [table id=29 /] <出典> 国税庁作成『No.2260 所得税の税率』より一部抜粋 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
総合課税によって計算される所得税の税率は、累進課税方式により7段階に区分されています。区分のため仮想通貨の取引によって得られた所得に対する税率は他の所得との合計金額によって決まり、決して一律ではありません。 たとえば、仮想通貨以外の所得がなければ100万円の所得でも税率は5%ですが、外資系企業に勤める年収1億円の会社員が仮想通貨で30万円の所得を得た場合は45%の税率が適用されます。
2.少額なら税務署にばれない?
仮想通貨の税金の仕組みについてお話ししたところで、いよいよ仮想通貨の税務調査についてです。仮想通貨で得た所得は、少額だったら税務署にばれないのでしょうか?
残念ながらほぼすべての取引を税務署は把握している
国内の取引所で売買された仮想通貨のデータは、基本的にほぼすべて国税庁に提供されています。では、海外取引だったら大丈夫だろうと思われるかもしれませんが、残念ながらそういう訳でもありません。 日本は約130ヶ国と租税条約を結んでいるため、国税庁は必要であれば情報の収集・提供を海外の税務当局に要請することができます。仮想通貨取引所が数多く存在している米国や欧州各国、中国や香港などとも租税条約を締結しているため、国税庁はいつでもそれらのデータを入手することができます。 つまり、国内外を問わず、税務署は仮想通貨の取引のほぼすべてを把握できると考えておいた方が良いでしょう。
でも少額ならばれない?
上述のように、金額の多寡にかかわらず、国税庁は仮想通貨の取引のすべてをチェック可能です。したがって「少額だからばれていない」のではなく、「ばれているけれど今のところ放置されているだけ」に過ぎません。 「たとえ少額であっても、税務調査がいつ来てもおかしくない」と考えておいた方が良いでしょう。
3.税務調査について
無申告の場合は言うまでもありませんが、しっかりと申告していても税務調査を受けることがあります。そこで、税務調査とは何をするもので、どのような手順で行われるものなのかを解説します。
税務調査とは
税務調査とは、納税者の帳簿類などを確認し、誤りがあればその是正を促す調査のことをいいます。基本的には税務署の職員によって行われますが、規模などが大きい場合は国税局が担当することになります。 なお、税務調査は以下の2つに分類することができます。 ・任意調査・・・納税者の合意のもとに行なわれる調査で、調査前には納税者もしくは税理士に日程連絡などが入ります。通常の税務調査の大半は、この任意調査です。 ・強制調査・・・国税局査察部(いわゆる「マルサ」)によって行われる調査などが、強制調査の代表例です。裁判所の令状を得て強制的に調査を行うことができ、納税に関する資料を押収する権利を持っています。任意調査とは違い、最終的には検察庁に告発することを目的に調査が行われます。
税務調査の流れ
仮想通貨の税務調査は、一般に以下の流れで行われます。 1.税務署から納税者へ、税務調査の事前通知が行われます。顧問税理士がいる場合などは、納税者本人ではなく税理士に税務調査の連絡が入ります 2.税務調査当日になると、納税者の自宅に税務署の職員が1~2名でやって来ます。取引内容の詳細や書類、経費の内容などが確認され、怪しい取引などがあれば徹底的に調べられます 3.調査は1~2日程度で終わり、問題があった場合は修正申告を行います。修正申告では、不足分の税金を支払うだけでなく、延滞税や過少申告加算税・重加算税などのペナルティも支払わなければなりません。
4.仮想通貨に強い税理士に相談するメリット
仮想通貨の申告に自信のない方や、税務調査が心配な方は、税理士に税務申告の依頼をすることをお勧めします。特に、税理士の中でも仮想通貨に強い税理士に申告を依頼すると、以下のメリットを受けることができます。 ・複雑な申告書の作成を任せられる ・節税の方法を教えてもらえる ・税務署からの問い合わせにも対応してもらえる
複雑な申告書の作成を任せられる
仮想通貨は、単なる売買だけでなく、マイニングや暗号通貨同士の交換、外貨での購入など取引のパターンが複雑で、申告書の作成が容易ではありません。 しかし、仮想通貨に強い税理士に依頼すれば、申告書の作成を任せることができます。
節税の方法を教えてもらえる
仮想通貨に詳しい税理士に申告を依頼すると、状況に応じて節税の方法が教えてもらえる場合があります。ネットで流れている不正確な情報に手を出して火傷をすることなく、専門家の正しい知識に基づくアドバイスを受けることができます。
税務調査になった場合は調査に立ち会ってもらえる
税務調査は誰にとっても不安で嫌なものです。しかし、申告書の作成を税理士に依頼してあれば、税務調査の時に一緒に立ち会ってもらうことができます。 質問にうまく答えられない場合でも、税理士があなたに代わって説明をしてくれます。
5.終わりに
「仮想通貨の所得が少額なら税務調査は来ない」と決めつけるのは早計です。税務署はあなたの取引データをすべて把握しています。ですから、とりあえず今は調査に来ていないとしても、来年になったら来るかもしれません。そう思って申告をしておいた方が良いでしょう。 なお、仮想通貨の申告に自信のない方や税務調査が不安の方は税理士に依頼することをお勧めしますが、すべての税理士が仮想通貨に詳しいわけではありません。そのため税理士に依頼する場合は、ホームページなどの情報を頼りに仮想通貨に詳しい税理士を探してみましょう。 ここまで記事をお読みいただき、誠にありがとうございました。 仮想通貨の税務申告や税務調査でお困りなら、国税OB税理士(国税出身税理士)が在籍し、税務調査対応、仮想通貨の申告にも対応している当税理士法人までお気軽にご相談下さい。
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