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相続財産を勝手に売却された場合はどうすればよい?使い込みへの対処法
相続財産が一部の相続人により勝手に処分されてしまうと、他の相続人が相続できる財産が減ってしまいます。
相続財産の使い込みは違法ですので、遺産分割協議の中で適切に追及し、使い込まれた金額を取り戻さなければなりません。
この記事では、相続財産の使い込みの例や対処法などについて解説します。
相続財産の「使い込み」とは?
まずは、相続財産の「使い込み」とはどういうことなのかについて解説します。
被相続人が亡くなって相続が発生した場合、被相続人が所有していたすべての財産・債務は「相続財産」として取り扱われます。
相続財産は、後に遺産分割協議などによって各相続人に分配されることになりますが、遺産分割が完了するまでは、「相続人全員の共有」とされています(民法898条)。
そして、共有物を処分する場合には、共有物の「変更」に該当するため、共有者全員の同意が必要です(民法251条)。
つまり、相続財産を処分するためには、相続人全員の同意が必要ということになります。
しかし、相続事例の中には、相続財産を管理している一部の相続人が、他の相続人に無断で相続財産を処分してしまうケースがあります。
これを相続財産の「使い込み」といい、原則として違法行為となります。
相続人による相続財産の使い込みが発覚した場合には、他の相続人は、相続財産を回復するための対応策を考えなければなりません。
違法な「使い込み」に当たる行為とは?
違法な相続財産の使い込みに該当する行為として、よくあるパターンを見ていきましょう。
相続財産を勝手に自分のために使うのは違法
使い込みの例としてもっともよくあるのは、被相続人と生前同居していた相続人が、自分のために相続財産を勝手に使ってしまうパターンです。
被相続人と同居していた相続人は、被相続人から財産の管理を任されていることが多いため、その相続人しか知らない預貯金などが存在していることが少なくありません。
こうした預貯金などの財産について、他の相続人にその存在を知らせることなく、自分のために使い込んでしまう例がよく見られます。
このような行為は、相続財産の違法な使い込みに該当します。
「被相続人の意思」と称して独断で相続財産を処分するのは違法
生前の被相続人に対する想いが強すぎる相続人が、
「○○(被相続人)が生きていたら、きっとこうしたに違いない!」
などと言い張って、他の相続人の意見を無視して勝手に相続財産を処分してしまうケースもあります。
しかし、被相続人の意思を尊重する相続財産の使い方が何かについては、相続人全員の同意によって決めるというのが民法のルールです。
したがって上記のような、一部の相続人による独断専行は、相続財産の違法な使い込みに該当します。
相続財産の管理人による債務の弁済はOK
相続財産を処分するのに、他の相続人の同意を必要としない例外的な場合があります。
それは、相続財産の管理人による、被相続人の債務の弁済です。
相続人が複数人の場合、家庭裁判所によって、相続財産の管理人が選任されます(民法936条1項)。
相続財産の管理人は、相続人のために、相続財産の管理および債務の弁済に必要な一切の行為をするものとされています(同条2項)。
被相続人が負担していた債務は、相続財産全体で負担する債務、言い換えれば相続人全員の共同の債務となります。
このような債務を弁済することは、相続人全員のためになる行為といえます。
したがって、相続財産中の債務を弁済することについては、相続財産管理人は、特に他の相続人の同意を得なくても行うことができるのです。
その際、相続財産中の預貯金などを弁済に充てたとしても、違法な相続財産の使い込みには該当しません。
相続財産の使い込みが行われた場合の対処法は?
違法な相続財産の使い込みが行われた場合、他の相続人の取り分が減らないように、適切に対処する必要があります。
以下では、相続財産の使い込みが行われた場合の対処法について解説します。
金額が少なければ、そのまま遺産分割協議を進めてもOK
使い込まれた金額が少ない場合には、そのまま遺産分割協議を進めることも考えられます。
使い込みを行った相続人以外の相続人全員が同意すれば、使い込まれた相続財産がまだ存在しているものとみなしたうえで、遺産分割を進めることができるとされているからです(民法906条の2第1項)。
もしも使い込まれた相続財産が、使い込みを行った相続人の相続分の範囲に収まっているならば、
- 元通りの相続財産が存在していると仮定して遺産分割協議を行う
- 使い込みを行った相続人が相続する財産の金額から、使い込まれた金額を差し引く
という手順を取ることで、公平な遺産分割を行うことができます。
説得して相続財産を戻してもらう
相続人の使い込みによって、他の相続人が相続できる財産が減ってしまうようであれば、使い込みを行った相続人を説得して、使い込んだ相続財産を戻してもらうよう試みましょう。
調停や訴訟に持ち込まざるを得なくなる前に、まずは話し合いで解決を試みた方が、当事者にとっての負担が軽くて済みます。
不当利得の返還・不法行為に基づく損害賠償を請求する
話し合いでは使い込まれた相続財産の返還に応じてくれないという場合は、訴訟の場で返還を請求するしかありません。
法的構成としては、
- 不当利得返還請求(民法703条、704条)
- 不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)
の2通りが考えられ、どちらか一方または両方を選択することが可能です。
まとめ
他の相続人による遺産の使い込みが発覚した場合、他の相続人は適切に連携したうえで、各自の相続分が減らないように適切な対応を取る必要があります。
どのように対応すべきかについては状況によって異なりますので、一度専門家である税理士や弁護士にご相談下さい。
当法人では、相続に関する豊富な経験や知識で、公平な遺産分割協議が行えるように依頼者様をサポートいたします。
また、紛争が生じてしまった場合には、提携弁護士をご紹介し円滑に連携して対応いたします。
お一人で悩むことなく、一度お気軽にコチラまでご相談ください。
統括代表パートナー税理士
勝又 義雅
山田&パートナーズ時代には相続・事業承継をメインとした資産税業務に従事し、上場企業のMBOアドバイザーなど難易度の高い資産税実務を経験。 現在は法人税務を中心として幅広い業務を行っており、税務スキームの検討及び構築・組織再編・グループ法人に関わる税務・富裕層に関連する税務業務やM&A関連業務などを得意分野に持つ。
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